2013年02月04日放送
#18「つらい!ひざ痛を救え!人工関節最前線」
- リポーター
- 荻原次晴
お年寄りを苦しめる膝の痛み。患者数は全国でおよそ820万人。今や国民病です。主な原因は「O脚」と言われています。
荻原さんが訪ねたのは東邦大学医療センター大森病院。人工関節の名医、中村卓司医師(整形外科人工関節センター長)を訪ねました。
中村医師「日本人は正座などをよくしたりするなど、O脚になりやすいといわれています。O脚が進んでくると、ひざの内側の負担が大きくなり、年齢とともに痛くなってきます」
ではなぜ、O脚がひざの痛みを引き起こすのでしょうか。
O脚になると、ひざの関節の、外側にかかる力より内側にかかる負担が大きくなり、その結果すり減った内側にさらに力が加わるので、内側の摩耗がさらに進み、O脚ももっとひどくなる…。
ひざの関節と関節の間には軟骨があり、骨と骨がぶつかり合うことを防いでいます。いわばクッションの役割。O脚がひどくなると、その軟骨がすり減り、骨同士が接触。これがひざの痛みの原因です。
荻原さん「すり減った軟骨は再生するのですか?」
中村医師「すり減った軟骨は再生されることはないといわれています。これが、痛みが長く続く大きな問題でもあるのです。」
すり減った軟骨は元には戻りません。そこで、人工関節に置き換える手術が生まれました。人工関節置換手術です。
現在、人工関節は「ひざ」以外にも「肩」「足首」「股関節」「肘」「指」など様々な部分で使われています。
中村医師「ひざ関節を人工関節にする手術だけで、年間におよそ7万例あります。手術としてはポピュラーなものになりつつあります。」
中村医師「人工関節は、ひざの関節とだいたい同じような大きさにデザインされていて、骨の表面を保護するように関節全体を金属のインプラントで覆ってしまうわけです。」
荻原さん「なぜこんなにピカピカ?」
中村医師「摩擦を非常に少なくするためです。そのためには、きれいに磨ききる技術が人工関節の寿命を大きく左右します。」
荻原さん「ピカピカの方がスムーズに動いて長持ちするということですね。」
鈴木良夫さん(82)は、半年前から歩くことができず、家の中では這って暮らしています。
大好きなだった旅行も、3年前に訪れたハワイを最後に、諦めています。
中村医師に診断してもらうと、鈴木さんのひざは軟骨の部分がすり切れ、骨と骨がくっつきそうになっています。 痛み止めの薬やマッサージでは、もはや限界。鈴木さんは人工関節の手術を受ける決意をしました。
鈴木さんの場合、今回の手術にかかる費用は、保険が適用され、自己負担は10万円にも満たないそうです。
鈴木さんの手術は、
全身麻酔を施され、痛みを感じることはありません。手術時間はおよそ3時間。10人の医師や看護師がサポートします。
鈴木さんのひざに埋め込む人工関節と同じものを見せてもらいました。材質はチタン合金。サビや腐食を起こしにくく、医療分野で幅広く使われているものです。
この人工関節を作っているのが、岡山県にあるナカシマメディカルです。会社のシンボルはなぜか船のスクリュー。
実はナカシマメディカルの親会社は、船のスクリューを作っています。スクリューは、水流や抵抗を綿密に計算した複雑な形状。
表面は限界まで滑らかに仕上げることが要求されます。他の追随を許さない研磨技術はまさに日本の匠の技。
滑らかさが人工関節の品質にとって大事なポイント。
ナカシマメディカルが人工関節づくりを始めたきっかけは、たまたま見学に来た、ある医師の一言でした。
「この研磨技術が生かせば、より品質の高い人工関節が作れるはず。」
日本で使われている人工関節のおよそ9割が海外からの輸入品です。そこに日本の匠の技を生かし、より素晴らしいものを作ろうと参入を決めたのです。
ナカシマメディカルの人工関節は、欧米の輸入品とはデザインも大きく異なっています。
正座をする日本人は、欧米人に比べて、関節を深く曲げる機会が多い…。ナカシマメディカルはそんな日本人のひざのために、深く曲がる人工関節を研究、開発にこぎつけたのです。ポイントは噛み合わせの、小さなズレ。
日本人のひざの特徴を研究し、開発に携わってきた勝呂徹医師(日本人工関節研究所所長)は、「膝が曲がる時はひねりながら曲がり、ずれていく。関節の自然な動きがデザインされている」と胸を張ります。
ナカシマメディカルの人工関節は、丸みのある側が回転軸となり、平らなもう一方がひねるようにずれ、従来のものと比べ、格段に深く曲がる設計となっているのです。
あの手術から3週間後、荻原さんが鈴木さんを訪ねました。
鈴木さん「手術跡もここまできれいになりましたよ。痛みもないです。もう立てます。」
お医者さんからは、あと1か月リハビリを続ければ、テクテクと歩けるようになるといわれているそうです。
鈴木さん「そろそろ旅行の計画をたてないとね。ハワイに行かないとね。」
ひざの人工関節の手術をした人は他にも…。
街をきびきびと歩く松田昌子さん(78)。実は両膝には人工関節が入っています。
松田さん「私はもう何十年と足がO脚だったんですよ。駅の階段も一段一段降りていました。」
膝の痛みに耐えかね、2年前、思い切って手術を受け、O脚とはさよならしました。手術の跡も、すっかりきれいに。
「今は、高尾山にも毎月登っています」
人工関節で人生はいきいき!
20年間膝の痛みに苦しんできたこの女性も、手術をすることに決めました。
「いままで、自由に歩けなかったので、希望が出てきています。」
またひとり、笑顔を取り戻せそうです。
<ひざの関節痛を予防する簡単トレーニングはこちら!>
今週の「それおも」スポット
東邦大学医療センター整形外科
【人工関節センター長中村卓司医師】
東京都大田区大森西6−11−1
電話:03-3762-4151(代表)
ナカシマメディカル【人工関節メーカー】
岡山県岡山市東区上道北方688-1
電話:086-279-6278
あきカイロプラクティック治療室
【ひざ痛予防トレーニングの先生・檜垣暁子(ひがきあきこ)】
神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎中央10-13 カーサ・アマール101
電話:045-945-7238(予約制)