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2013年1月28日放送

#17「文豪たちが愛した老舗の味」

出演
辰巳琢郎 辰巳真理恵

川端康成 文豪のなかでも食通として名高い川端康成。彼が愛した京都の老舗には、ある共通の足跡が残されていました。それは一体…?川端の好んだ「味」とは?そして、見えてくる彼の素顔とは?

浜作 まず訪ねたのは、板前割烹の老舗「浜作」。

創業は昭和2年。

板前割烹 割烹といえば、お座敷料理という常識をガラリと変え、客の前で調理を見せる「板前割烹」のスタイルを初めて取り入れた老舗です。

「さぞや多くの名士・文豪が訪れたのでは?」という問いに三代目のご主人・森川さんは、2階に案内してくれました。

川端康成の書 辰巳さんを出迎えたのは、川端康成の書。

「川端がノーベル賞を取った時に、うちのオヤジが頼みまして、これを書いていただきました」とご主人。

作家・菊池寛に連れられ来店した以来の常連、川端康成がノーベル文学賞を受賞した時に揮毫してくれたものだそうです。


谷崎潤一郎の書 昭和33年から4回にわたって、ノーベル賞候補だったことが近頃明らかになった谷崎潤一郎のものも。

日本人初のノーベル文学賞を争っていた二人がこの店ですれ違っていたのかもしれませんね。

美味延年 そして、川端の書がもう一つ。

「美味延年」。

いったいどういう意味が込められているのでしょうか。

鯛のあら炊きと伊勢エビの具足煮 川端が好んで食べたという「鯛のあら炊きと伊勢エビの具足煮」を再現していただきました。明石で上がった鯛と伊勢エビを上品な味で炊き上げた逸品です。

森川さん 川端康成に会ったのはまだ子供のころだったと話す三代目のご主人・森川さん。

「先生は、必ずカウンターの隅の席に陣取り、他のお客さんをじっと観察されていたようです。お酒は飲まず、こってりした味がお好きでした。」

川端康成は、ほかの客の話をこっそり聞いて、小説の題材を練っていたのかもしれませんね。

川端康成は、人からの求めに応じてよく書を書いたといいます。

ほかの老舗にも彼の書があるかもしれません。


三嶋亭 すき焼きの老舗、三嶋亭。

創業は明治6年。文明開化によって食肉文化が広まってきた頃、初代当主が長崎へ牛鍋を学びに行き、京都に戻り作ったのがすき焼き屋・三嶋亭です。

当時のおしながき 当時の写真 階段 当時は、かけそば1杯が1銭。すき焼きは、7銭で食べられたといいます。現在に比べて、庶民の味だったんですね。当時の写真から、その盛況ぶりが分かります。

お店に入ると階段が真ん中で仕切られています。創業当時からこの造りだったそうで、上りと下りを分けなければならないほど、込み合っていたのでしょうね。

美味延年 ありました。川端康成の「美味延年」。

川端康成がよく訪れた部屋で、彼が好んだすき焼きを頂きます。

すき焼きのお肉は、4等級以上の黒毛和牛。中でも特に柔らかいとされているメスだけを使用しています。仕入れる産地は特に決まっておらず、ご主人自ら、仕入れ先を見て歩き、その日一番いいお肉を探してきます。 仲居さん ちなみに今日のお肉は、佐賀県産の黒毛和牛。

三嶋亭では、昔から仲居さんが美味しく焼いてくれます。

砂糖 まず入れたのはお砂糖。

肉の表面を砂糖でからめることで、おいしい肉汁を外に出さない工夫です。

重厚な味 まさに川端康成が好みそうな重厚なお味・・・。

普段は無口で無愛想な川端康成。ここでも「すき焼きを…」「そろそろご飯にしよう…」「おあいそ…」の三言しか話さなかったそうです。

絶品のすき焼き 川端康成は、ごはんと一緒に、絶品のすき焼きを味わい、『美味延年』の書をしるしたのでした。


都ホテル 辰巳親子は川端康成の常宿だった都ホテルへ。

名作「古都」が執筆された部屋があるというのです。自然の地形を生かした庭は、四季折々に違った表情を見せてくれます。

雨過山如洗 こちらにも川端の書がありました。

「雨過山如洗」

庭 川端は、庭を見た感動を書という形で残していました。


いもぼう平野家本家 いもぼう つぎなる、川端康成の味の足跡にヒントは、小説「古都」にありました。

小説の中に登場する、いもぼう平野家本家。「いもぼう」とは、江戸の中期に生まれた、海老芋(えびいも)とよばれるお芋と、北海道産の棒鱈を炊き合わせた京料理です。

川端が食事をした部屋 こちらが、川端康成が食事をしたというお部屋。

美味延年 床の間にありました、「美味延年」です。

十四代女将の北村さん 十四代女将の北村さんが川端康成が来店した時の様子を話してくれました。

「はじめ、父が色紙をお願いしたら『いや』とおっしゃって断られました。また別の機会にお見えになったときは、先生の方から『こないだ言っていたね。書いてあげるよ』と覚えていらっしゃいました。」

さらに、『美味延年』の意味を尋ねると、「おいしいものを食べて長生きできた、ということと、長生きをし、おいしいものを食べられてよかったなぁということと。それは読む人の気持ち次第だよ、と教えてくださいました。」

花御膳 川端康成が好んで注文した花御膳。祇園豆腐やとろろのり巻きなどが添えられています。

時間をかけて炊いた海老芋 時間をかけて炊いた海老芋は、味が染みて、ふかふかです。

厨房 厨房を見せていただきました。

海老芋から出る灰汁が棒鱈を柔らかくし、棒鱈からでるにかわ質が海老芋の煮崩れを防ぐ。お互いを支えあうことから、この炊き方を“夫婦炊き”ともいうそうです。

川端の作品と京都の老舗の味わいはまさに「美味延年」。どちらも長く愛され続けていくのです。



今週の「それおも」スポット

浜作【板前割烹】

京都市 東山区祇園八坂鳥居前下ル下河原町498 電話:075-561-0330
アクセス:京阪電鉄「四条駅」徒歩約10分 市バス「祇園」徒歩約3分
営業時間:昼 11:30〜14:30(14:00ラストオーダー) 夜 17:00〜(21:00ラストオーダー) 定休日:水曜日

総本家 駿河屋【紅羊羹】

京都市伏見区京町3-190 電話:075-611-5141
アクセス:京阪電鉄「伏見桃山駅」徒歩約3分 近鉄京都線「桃山御陵前駅」徒歩約3分
営業時間:8:00〜18:30 定休日:不定休

とり市老舗【千枚漬】

京都市中京区寺町通三条上ル天性寺前町523
電話:075-231-1508
アクセス:寺町商店街 中

三嶋亭【すき焼き】

京都市中京区寺町三条下る桜之町405 電話:075-221-0003
アクセス:地下鉄東西線「京都市役所前」徒歩約5分  京阪電鉄「三条」徒歩約5分 営業時間:11:30〜22:00(21:00ラストオーダー) 定休日:水曜日(祝日の場合は営業、振替休日有※11・12月は無休)

ウェスティン都ホテル京都

京都市東山区三条けあげ 電話:075-771-7111
アクセス:地下鉄東西線「蹴上駅」すぐ※京都駅八条口よりシャトルバスあり
チェックインタイム:15:00 チェックアウトタイム:11:00
都あそび2食付ステイプラン:28,000円〜(2名様 一泊一室/朝・夕食付)

いもぼう平野家本家【いもぼう】

京都市東山区円山公園内(八坂神社北側)
電話:075-525-0026
アクセス:市バス「祇園」徒歩約3分 京阪電鉄「祇園四条駅」徒歩約10分 阪急電車「河原町駅」徒歩約15分
営業時間:11:00〜20:30(20:00ラストオーダー) 定休日:なし