2013年1月7日放送
#14「グルマンの冒険」
- 出演
- 桂春蝶 古和咲紀
林家木久蔵 こごま
<開高健が愛した!海の宝石箱とは>
「裸の王様」で芥川賞を受賞した行動派の作家、開高健。食通としても知られ、世界の果てまで食べ歩き記した食の冒険は多数。まさに、地球を丸かじりしようとした男。開高はある本にこう書き記している。
「赤くてモチモチしたのや、白くてベロベロしたのや、暗赤色の卵や緑色のみそや、なおあれがあり、なおこれがある」「脆美(ぜいび)、繊鋭、豊満、精繊(せいせん)。それはさながら“海の宝石箱”である」
そして、それらを豪快に大きい丼に盛りつけると、一挙に、“海の宝石箱”のありようをあらわす、というのだ。これが開高健の愛した「セイコガニ丼」だ。
春蝶さんと咲紀ちゃんの二人が向かったのはセイコガニがとれるという福井県。さっそく商店街で町の人に聞いてみると…。セイコガニとは福井県で取れるズワイガニのメスのことで、こちらではオスをズワイ、メスをセイコガニと呼んでいるのだそう。とくに、セイコガニの外子(卵)と内子(卵巣)が美味なのだとか。
さらには、なんと福井県では中学生が授業でセイコガニを学ぶという情報が。
カニの味や食べ方を学ぶことで、故郷の味を覚え、魚への関心を高める、とてもおいしい授業が行われているのだ。
ところで、最高のセイコガニはいったいどこで手に入れることができるのか。教室の先生に伺うと、「三国の港に行けば、皇室に献上するカニが取れる」という情報が。福井県でも有数のカニの水揚げ量をほこる三国港。しかもセリは、夕方に行われるという。夕セリ(ゆうせり)に間に合うように急いで三国へ。到着すると、漁港も市場も閑散としている…。
三国漁業組合長の米田さんに聞くと、昨日は時化ていたため船がでず、今朝出航したばかりだという。
その組合長さんが教えてくれたのが「カニは目利き10年、茹で一生」という言葉。セリで、いいカニを瞬時に見分ける目利きには10年、茹でを極めるのは一生かかるということ!カニ、奥が深いです。
組合長さん太鼓判の目利きの方を紹介してもらいました。大丸水産の澤崎さんは、三国から皇室へ届ける「献上ガニ」を選ぶ、今年の担当者になる予定の「目利き」です。
おいしいセイコガニの見分け方は?
澤崎さん「セイコガニの価値は『内子』と『外子』。
甲羅がパンパン張って大きく外子がたくさんはいっているものがいい。」
澤崎さんから、セイコガニを分けていただき、茹で名人のいる料理旅館「若ゑびす」を紹介してもらいました。
料理長の石田さんがその素晴らしいカニ調理の技術で、メニューにはないセイコガニ丼を作ってくれることに!
まず、カニを湯がく前に真水に投入。20分程度絞めます。これはカニを形よく、茹で上げるためにかかせない下準備なのだそう。
次に、甲羅を洗う。このひと手間が茹で上がりのカニの色艶を左右するそうです。
沸騰した鍋にカニを投入。要の塩加減は海水よりちょっと薄い程度が若えびす流。落し蓋をし、一度湧き上がってから15分程度茹でる。
「うわーきれい!」
春蝶さんと咲紀ちゃん、きれいに赤く茹であがったセイコガニを見て声を揃えました。
料理長、すかさず手際よくカニのそれぞれの部位をさばいていきます。ルビーの様に赤く輝き、濃厚な味わいの「内子」。プチプチとした食感がなんとも楽しい「外子」。そして甘く肉厚なカニ身…。それぞれが光り輝く宝石たち。
これらすべてを混ぜ合わせた時、海の宝石箱が輝き始めるのです。
咲紀「本当に宝石箱ですよ」
味付けは、茹でるときに使った塩とカニの味噌だけ。盛り付けは、開高さんにならって大きな器で。
福井産のコシヒカリの酢飯の上に海苔をふりかけ、そのうえに、セイコガニ8ハイ分をすべてのせると…。
春蝶「完成です!ちょっと間近でみさせてもらおう。うわー、もうこれは」
これぞ開高健が愛した海の宝石箱・セイコガニ丼。さあ一期一会の味、全身で受け止めよ。
<檀一雄が愛した“白い”きんぴらごぼう>
万能野菜の代表格、ごぼう。バイプレイヤーとして料理に登場することが多い野菜。一般的な食べ方といえば、旨味がしみ込む筑前煮、けんちん汁、そして定番のきんぴらごぼう。しかし、そのきんぴらに最高に贅沢な食べ方があるという。
「家宅の人」で知られる直木賞作家、檀一雄。プロ級の料理人でもあり、世界中でグルメを追い求めた。檀ふみさんの父親でもある。そんな檀一雄が書き残したごぼうの最高の食べ方、それは「きんぴらごぼうの白仕立て」。
一般的なきんぴらごぼうは、酒、みりん、砂糖などで味付けするため茶色い。しかし、檀流は上品な“白”にこだわった。白くするために調味料を使わない。旨みの強いごぼうがあればいい。では旨味の強いごぼうはどこにあるのか?
木久蔵さんとこごまちゃんの二人は日本一のごぼうの産地、青森・十和田市へ。十和田のごぼうを調べると、一般的なごぼうの糖度10.6に対し、なんと17.4!これだけ糖度が高ければ、余分な調味料は必要とせず、檀流のきんぴらの白仕立てができるかもしれない…。
二人はまず、十和田おいらせ農協へ。やさい課の野月さんによると、やはり、十和田のごぼうは「甘い」のだという。
木久蔵「甘いごぼうって食べたこと無いね」
こごま「ごぼううってスゴイ苦いイメージあります」
ごぼうが甘い!?と言われても、なかなか実感がわかない二人…。ごぼう畑に到着。
栽培する甲田さんは「土が違うんです。このあたりでは鉄分やカルシウムを多くするミネラル栽培で育てていて、ごぼうの糖度や栄養価を高めているんです。」
抜きたてのごぼうをそのまま味見してみると…。
こごま「普通のより繊維が残らない」
木久蔵「エグくない!すごいシャキシャキしている」
そう!十和田のごぼうはエグミを感じさせないほど糖度が高いのだ!
実際に糖度計で図ると…メロンやマンゴーに匹敵する17度を超えた!この甘さがあれば、調理する時に砂糖を使う必要がない。
続いては、きんぴらごぼうにかかせない、にんじんだ。近くのにんじん畑の鈴木さんににんじんを掘らせて頂くと…。これがまた甘い!冬の人参は、中の水分が凍らないように自分で糖度を高めて凍らないようにするのだという。
甘味のある冬の人参。青森ならではの厳しい寒さの賜物なのだ。
食材が揃ったところで、十和田のきんぴら名人・大久保さんを訪ねた二人。檀流きんぴらごぼうの白仕立てを、素材を生かす十和田流で調理開始!
大久保さん「ごぼうを洗うんですけど、土をとる程度で。皮はむかなくても大丈夫。」
ごぼうの旨みと香りは皮に集中しているため、皮ごと食べるのが十和田流なのだ。
大久保「あく抜きもしませんよ。あく抜きすると香りも栄養も逃げてしまう」
十和田ごぼうはあくが少ない。つまり、あく抜きせずに済むので大事な旨みと香りをそのまま残せるのだ。そして、十和田ではごぼうの歯ごたえの良さを最大限に楽しむため、ささがきではなく、斜め切りに。さらに、ダシは使わず、代わりに、檀流で使うのは肉。
大久保さん「強火でバンバン炒めてもらったほうが美味しいです」
強火で一気呵成に炒める。素材の味を生かすには短期決戦に限る。
木久蔵「みりんとお砂糖は?」
大久保「入れません。ごぼうで糖分が結構あるんです」
普通のきんぴらごぼうで登場する砂糖やみりんの出る幕は、無い。最後に、酒と薄口醤油を少々。
調味料をあまり使わないことで白く仕上がってきた。
十和田流で進化させた、檀一雄が愛した「きんぴらごぼうの白仕立て」が完成!
ごぼう本来の旨みが際立だった究極のひと品。さぁこの一期一会の味、いきいきと全身で受け止めよ!
今週の「それおも」スポット
武生第二中学校【セイコガニの生態や食べ方を学ぶ】
福井県越前市妙法寺町42-15
アクセス:JR福井駅より車で約30分
福井県漁連三国支所【夕セリ】
福井県坂井市三国町宿1丁目17-33
電話:0776-82-1221
アクセス:えちぜん鉄道 三国港駅 徒歩1分
大丸水産【セイコガニ】
福井県坂井市三国町神明2丁目10-23
電話:0776-82-0104
アクセス:えちぜん鉄道 三国港駅 徒歩7分
若ゑびす【セイコガニ丼】
福井県坂井市三国町米ケ脇4丁目3-41
電話:0776-81-3155
アクセス:えちぜん鉄道 三国港駅 徒歩13分
JA十和田おいらせ【ごぼう】
青森県十和田市西十三番町4-28
電話:0176-23-0311
アクセス:JR八戸駅より車で約1時間