<出世魚> 成長段階で呼び名が変わる、出世魚として知られるブリ。
<富山のブリの回遊ルート> 富山湾で獲れるブリは、3月から6月頃、東シナ海で生まれます。孵化した稚魚は“流れ藻”に乗って日本海と太平洋に分かれて北上します。
日本海側を流れる対馬海流に乗ったモジャコ(藻についている雑魚だからモジャコ)は、8月のお盆の頃、富山湾に到着。体のサイズは30cm前後に成長しており、ツバイソと呼ばれます。そのまま3年近くを富山湾で過ごし、60〜80cmほどの、ガンドと呼ばれる大きさになるまで成長します。3年目の春、ブリとなって富山湾を離れ北上。エサの豊富な北海道や津軽海峡で夏を過ごします。 冬を迎える頃、サンマやイカを食べ丸々と太ったブリは、越冬のために一気に南下して、故郷の東シナ海を目指します。この南下の途中の12月から1月頃が、富山湾を通過する時期にあたります。冬の日本海は、西風が吹き大しけが続きます。しかし富山湾は能登半島が風よけとなるため、比較的穏やかで、水温も下がりにくくなるのです。そのためブリは富山湾に集まり、湾内に設置された定置網にかかるのです。
<ブリ文化圏> 富山県の糸魚川市を流れる姫川を基点に、静岡県の富士川を結ぶ線に日本列 島の割れ目・フォッサマグナがあります。ちょうどこの線を境に、正月やお めでたい時に食べる魚が変わるという現象があります。 境より東はサケを食べる文化圏。西はブリを食べる文化圏に分かれます。 そのブリ文化圏のなかでも、険しい山地に囲まれた飛騨地方に「飛騨鰤」という、江戸時代から伝わる名物があります。
富山湾で獲れたブリは、北陸と飛騨を結ぶ「鰤街道」を通って飛騨へと運ばれます。
冷凍技術などなかった昔、富山から信州、飛騨へと運ぶため、ブリに塩がふられました。時間が経つにつれて、塩は程よくブリに染み込み、刺身とはまた違った味わいをかもし出したそうです。つまり、塩とブリの旨みが溶け合い、染み込んだ塩ブリが、名物「飛騨鰤」というわけです。