くも膜下出血のメカニズムは、現在のところ完全には解明されていません。近年、医学界だけでなく他の分野からのアプローチも試みられているのです。そのキーワードが
バイオ流体力学。東京大学生産技術研究所で研究が行われています。流体力学とは、空気や水の流れがどのような現象を引き起こすのかを研究する学問。身近なところでは自動車の車体デザインで空気抵抗がどのように変化し、スピードにどのような影響を与えるのか?燃費を向上させるにはどうしたらいいのか、流体力学が利用されています。バイオ流体力学の研究工程は、まず
コンピューターに
脳動脈瘤の
CT画像のデータを取り込んでいきます。集められたCT画像のデータから、コンピュータグラフィックスによる
3D画像を製作します。ここに
血流などの
データを計算し、脳動脈瘤の場合、どのような血液の流れが起こり、血管のどこに力が加わっているのか
シミュレーションするのです。画面を見ると、脳動脈瘤の赤い色の所、つまり根元に、大きな力が、かかっていることがわかります。動脈瘤はてっぺんから破裂するとイメージしまいがちですが、
実際は
根元に力が加わり、そこから
破裂したことがシミュレーションでわかります。血管の中の血液の流れ方もシミュレーションできます。白いところが
流れの速い部分。血管壁へのぶつかり方が分かります。将来的に手術のシミュレーションに使おうと考えています。例えばコイルを使った動脈瘤塞栓術。動脈瘤にコイルを入れたら、
10年後にどのような影響が出るのか?コイルはずれたりしないのか?シミュレーションによって探っていきたいと
研究を進めているようです。まだ完全に解明されていないくも膜下出血のメカニズム。その解明に向けて、専門分野の垣根を越えた研究が今も行われているのです。