◎委員
しっかりと取材をされ、当時の豊富な記録映像も加えられて、すばらしいドキュメンタリーをつくられたという印象を受けました。
軍艦島を残そうとする研究者の視点と、元島民の方々からの視点を織り交ぜたわかりやすい構成、ドローンを使った映像等もすばらしかったです。ナレーションも違和感なく聞くことができました。
この炭鉱が当時の日本の近代化を支え、かつ、日本の最先端の生活環境があったという話の一方で、炭鉱労働、鉱山で働くという、危険でつらい仕事だからこそ、職場と住居を究極的な形で近接をさせ、明治後期から大正期には、例えば(鉱夫を管理する)納屋制度があったなどの陰の部分がありつつも、軍艦島を未来に向けて残す墓標という結論を導き出すために、最後は、労働環境などとは別の視点で、生まれ育った人たちがコメントして、ハッピーエンド的に終わるという感じが見受けられ、見る側には余韻が残りました。
気になったところは、島のオリエンテーションといいますか、理解をサポートする意味で小さいマップなどが出てくると、東西南北がわかりイメージしやすくなかったと思いました。
◎局側
今回は、インパクトがある映像でしたので、画面にマップなどのテロップを入れずに、絵力を重要視しましたけれども、ナレーションでは何号棟などの説明がありましたので、マップを出して星印か何かつけるなどすべきでした。
◎委員
軍艦島に10年前訪問したときに、違和感を覚えました。特に、大きな団地は、廃墟で見るに耐えない感じなのに、それを世界遺産として、外国の方々に見せることが本当にふさわしいのかなという感じがしたのを覚えています。逆にこういうのを取り上げていただくと、日本にもそういう世界遺産があるということを広く知らせていただいてありがたいのですが、なぜ世界遺産なのかという点にもう少しスポットが当たっていると、よりわかりやすかったかなと思いました。
世界遺産とうたっている以上、番組の作り方としては、これから日本は軍艦島をどういうふうに世界に見せるのかということを、地域や国にも考えさせるような構想にしてもよかったかなと思いました。
◎委員
いろいろな要素があり、とても難しかったのかなと思います。建物という物理的なものと、人間の心情みたいなものが、それぞれのファクターとしてはおもしろかったのですが、有機的に構成されてないところが残念だったという気がします。
明治時代の日本の産業革命遺産ということで、8件の要素が集まっての世界遺産ということですが、アパート建築は世界遺産ではないという、私たちが想定しているのと違った形の世界遺産だということが、調べてわかりました。世界遺産ではないアパート建築は、今まで廃墟として放置されていましたが、実はすごく文化的な意味があったことがわかり、大変だという話になっていますが、その辺のバックグラウンドがきちんと描かれていると、もう少し説得力があったのかなと思いました。
今回の番組を通じて端島で生きた人たちと接点を持たれているので、皆川さんだけでなく、いろんな方たちの端島での生活や思いがもう少し紹介されていると、考えさせる誘因になったと思うのですが、その辺りが弱いので、気持ちが乗らなかったように思います。
◎局側
バックグラウンドが弱かったというご指摘に関しましては、3つのネタを2時間の番組の中で、深掘りしたり、専門的な内容にし過ぎたりしてしまうと視聴者がついていけるかなと思ってしまい、ご指摘の通りとなってしまいました。ものによってはバックグラウンドをしっかり描いて、内容を深掘りしたネタもあってもよかったかなと、反省しております。
どこまでが世界遺産か、なぜ世界遺産になったのかという部分に関しましては、ご指摘のとおり、しっかり踏み込んだ絵ができていませんでしたので、次回以降、参考にさせていただきます。
◎委員
建物の保全に関する取り組み、あの時代の技術の高さや苦労、あるいはそれを将来の鉄筋コンクリート建築に生かしたいと調査研究する学者や建築家などの苦労は、文字では伝わらないので、それは映像の力だなと思いましたし、ドローンの映像も織り交ぜながら、迫真に迫る映像でしたので、すごく感心し、当時の人たちに敬意を表しました。
最後に島民が一言ずつ思いを語られましたが、中途半端で、駆け足でしたので、これで1つの番組ができるくらいに掘り下げればいいのにとか思いました。しかしながら、最後に竹中さんのナレーションで、光と陰云々から始まって、だからこそ守ってほしいというナレーションで全部腑に落ち、これこそが番組の伝えたいことで、これを言うために、老朽化した建物の保全のみならず、そこに込められた島民の思い、あるいは皆川さんがあの写真の表題を「故郷」とつけたことが万感の思いで流れ込んできて、よかったと思える番組でした。
◎局側
最後の元島民の方たちの、フラッシュで見せていったふるさとへの思いという部分は描きたかった部分ではありましたが、放送尺もあり、皆さんにご出演いただいたので、最後にその思いだけでも視聴者に伝えられたらということで、最後のエンドロールの部分にブロックを入れて、伝える形で描きました。
◎委員
何年か番組審議委員をやらせていただいていますが、一番好きな番組でした。
映画にしてはどうでしょうか。皆川さんのように、過去に置いてきたものをテレビの取材で一緒に拾いに行ったことで、皆川さんの残りの人生が太くなるという瞬間を見ることができました。社会問題、環境問題、世界遺産をどうするかは置いて、これが映画になるのなら、もう一度見たいなと思います。また、炭鉱に対して、つらい、きつい、大変というイメージを持っていましたが、いじらしく、いとおしく生きていた人たちが軍艦島にいたことを知ることができたことは、私にとってはとてもよかったなと思います。今まで見た番審の番組の中で、すごく心が豊かになり、想像力が働く番組でした。
◎局側
映画にしたらどうかという部分に関しては、建築のプロジェクトも今動き続けているところはありますので、大きな動きだとか、視聴者に伝えるべきものがあったときには、ぜひ前向きに検討していきたいと思います。
◎委員
2時間という長い番組でしたが、軍艦島を知らなかったところから最後には号泣するくらい、胸を打たれる番組でした。
冒頭で、ざっくりオーバービューの映像がつくられていたと思いますが、それも結構引き込まれ、保全における努力や、そこから人形をベースにした島民の方々の思いなど、両方あるというのが最初にわかったので、軍艦島を知らないけれど、特に人にフォーカスした部分は自分も共感でき、自分事化できた部分があったので、そこが冒頭に見られたのは、番組を最後まで見るモチベーションになり、すばらしかったです。
改善点としては、人形が冒頭に出てきたときは少し怖い印象を持ちましたので、もう少し人にフォーカスした部分があるとよかったのかなと思います。
皆川さんの心情の変化が、今回のドキュメンタリーにおいて、私個人としては一番刺さった部分でしたので、その部分が、最初に見えると、より興味を持てたかなと思いました。
また、世界遺産の登録によって制約が出来る中、なぜ世界遺産にしたのかという話が番組の中であると、より理解できたかなと思います。
◎局側
皆川さんのブロックを早めに出したほうがよかったのではというご指摘は、おっしゃるとおりで、放送直前まで、21時台に置く議論を重ねたのですが、今回、建築と人形という部分をある程度の尺で描いてから皆川さんを出したほうがいいということで、後半になってしまいました。次回は、幾つかのネタを交差させるときはしっかり散りばめながら、後半のフックになるような構成にしていきたいと思います。
◎委員
貴重な内部映像や島民らの証言が残されたことはすばらしいことと思いました。
すごく興味深く見させてもらったのですが、2時間でしたので、すごく長かったなというのはあります。もう少しコンパクトにできなかったかなというのはあります。今後もこういう難しい問題にどんどん立ち向かって、番組をつくってください。
◎委員
今回の題材、テーマからすると、これを1時間にするというのは無理で、せいぜい90分かなと思いますが、2時間でも十分耐えられるだけの題材、それからつくり込み、構成であったように思います。
非常に貴重な映像でしたし、番組をつくるときの苦労もいろいろあったと思いますので、そのあたりをお聞かせいただければと思います。
注文的なことを申し上げると、2点あります。1つが、軍艦島という物すごい題材を扱いますので、番組の最初に10分程度、軍艦島がどういう存在だったのか、炭鉱の町として生まれて、成長してきたことなど説明はありましたが、島の構造であるとか、どこから炭鉱に入るのかの仕組みとか、それからあと、当時の島民の生活など、もう少し厚くしてもよかったのかなと思いました。
少し説明が足りなかったと思いましたのは、世界遺産に登録された経緯、なぜ世界遺産に登録されたのかという点です。もう1つ、これは若干説明がありましたが、なぜあれだけの技術者が入って保全をしなければならないのかというところの説明が、もう少しあってもよかったかなと思います。
もう1つが、竹中さんのナレーションの中に、「軍艦島はこの国の光と陰」というところがありましたが、その陰というところをもう少し掘り下げると、厚みが出たかなと思いました。
◎局側
企画書をいただいたときに、軍艦島はいろいろな時代背景もありますので、1時間ではなかなか難しいかなと思い、2時間という枠を設けて、しっかり丁寧に描こうということになりました。
苦労につきまして、現場から一番声を聞いているのは、許可取りの部分で、建物の中に入るのは本来だめなのですが、今回、研究者の人たちの同行のもと、安全にやるということで中に入らせていただいたのですが、その交渉などに苦労したと聞いています。
冒頭15分に、軍艦島の歴史背景を入れた経緯としましては、軍艦島を知らない方が見たときに、何も歴史を知らずに、なかなか後ろまで見ていけないと思いましたので、まずは一旦軍艦島の頭から最後まで、閉山に至るまでの歴史背景を早めに一回さらい、それをわかった上で、建築と人形と皆川さんという部分を見たほうが感情移入できるということで、頭は15分くらいで、簡単な歴史背景の説明にしました。もう少し詳しく描く内容を入れていく効果というのは議論していこうと思います。
◎委員
タイトルが悪い気がしました。「故郷 軍艦島」、「よみがえる生きた証 軍艦島」など、人の心情に訴えかけるタイトルにしたほうが、いろいろな世代の人たちが感動できると思いました。
◎局側
今回、3つの軸だったのですが、一番メインが建築の研究や劣化調査に少し重きを置いていましたので、しっかり描いたほうがいいということで、今回の真面目なタイトルに決めさせていただきました。次回やるときは、改善していこうと思います。
◎委員
質問ですが、世界遺産は建物が含まれてないと言われましたが、あの建物を維持することは、世界遺産と関係ないということですね。
◎局側
あのシルエットがあってこその軍艦島と思いますので、あの建物をしっかり保全していく、今の劣化の状態を崩さず、あの状態をキープしていくことが重要でもあると思います。
◎委員
人形のエピソードは、持ち主らしき人が見つかったので1本の軸になったのでしょうか。
◎局側
見つからなかったら、見つからなかったなりのエンディングに持っていこうと思っていたのですが、撮影を続けているうちに、ディレクターが持ち主らしき人にたどり着いたので、ほっとしました。
◎局側
本日、皆様からいただいた貴重なご意見は、今後の番組制作の参考にさせていただければと思っております。
それでは、番組審議会を終了させていただければと思います。お忙しい中、ありがとうございました。
午後5時24分 閉会
*BS-TBSでは、番組審議会委員のご意見を真摯に受け止め、今後の番組内容の向上に活かしていく所存です。
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