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放送番組審議会

第74回

2021/09

1.

日 時

2021年9月15日(水)午後4時

2.

審議方法

今回の審議会は、新型コロナウイルスの感染拡大防止の為、リモートでのオンライン審議で行った。

3.

審議会の構成

委員総数 8名

 

参加委員数 6名

 

出 席 者

委員長  末綱隆
副委員長 出井直樹
委員   寺﨑明 古川柳子 田中ウルヴェ京 橋口いくよ
     ※天野委員・瀬古委員は録画出演

 

局側

相子 代表取締役社長
本田 常務取締役
中澤 取締役・番組審議会統括
鈴木 取締役・編成制作局長
高松 編成制作局編成部長
大手 総務局ライツ考査部長
川口 番組審議会事務局長
中尾 番組審議会事務局幹事
佐藤 審議番組担当局長
加納 審議番組プロデューサー

4.

議 題

 
 

(1)審議事項

「アスリート夢共演」
2K及び4K放送日時:8月7日(土) 11:00~11:30(メイン審議)
           8月14日(土)11:00~11:30(サブ審議)

 

(2)その他

(1)審議事項

◎委員

 今回、3人のパラアスリートの方たちが出ていらっしゃいましたが、それぞれの皆さんがすごく魅力的で、人間としてもとてもすばらしく、心打たれながら拝見しました。どうしても障がい者を扱うときに、最近、「感動ポルノ」という言葉もあって、バランス感覚が求められる領域だと思います。大島さんと塚原さんの対談も含めて、とてもバランスと抑制が効いた番組だったと評価させていただきます。

◇局側

 この番組の制作スタッフにおきましては、無理に感動をあおることはしないように、一スポーツ選手、一アスリートとしての扱いということをいつも心がけています。それまでのスポーツにかけてきた部分を描くところというのは、もちろん感動を呼ぶものではございますが、過剰に演出はしないようにと心がけております。

◎委員

 パラリンピックって何だろうとか、障がい者スポーツって一体何だろうと考えると、障がい者の方のほうが健常者よりも体を動かすことやスポーツが大切なのではないかと思いました。
 障がい者のほうが運動は大切という観点から考えたときに、パラリンピックは、オリンピックほど報奨金や運動施設など国や地方公共団体の支援やサポートが充実していません。競技場や支援体制、コーチングなど、いろんな意味で日本はスポーツ大国に比べるとかなり劣っているというのが、今回のオリパラで明確になったのではないかという気がします。
 障がい者の方のほうがむしろ健常者よりも運動が大切だという前提で、競技大会や競技を取り巻く環境整備に力を入れてほしいと思います。せっかく障がい者向けのスポーツ番組をやっているので、どこかでそういう要素が入っていると、みんなで支援しようみたいな雰囲気が出てくると思いました。

◎委員

 先ほどの委員のご意見に関して、私からも少しお話させていただきたいと思います。パラリンピックの車椅子バスケットボールに8年間かかわっておりましたので、パラリンピックという立場と、それからオリンピックの立場からお答えできることがあると思いました。
 オリパラの支援に関してですが、2013年に自国開催が決定してから、ようやく、スポーツ庁がパラも入れるようになって、少しは改善されています。もちろん、オリとは比較になりませんが、ナショナルトレーニングセンターでもパラリンピックの競技が使える施設ができたりして、少しよくなってきたという状況です。

◇局側

 パラリンピックの競技環境などの支援については、先に委員からご説明を頂戴しました。私どもが取材する上で感じている部分では、障がい者アスリートの支援はまだまだ立ち遅れているところが多いと感じています。

◎委員

 パラリンピックの選手たちは、普通のオリンピックの選手に比べて日の目を見ないことが多いので、こうやってスポットを当てて紹介してもらったのは、すごくよかったと思いました。そして、この番組はパラリンピックを応援するいいきっかけになったと思います。
 30分番組なので限界があるかもしれませんが、塚原さんと大島さんのもう少し深い話がもっとあってもよかったと思いました。
 あと、佐藤アナが出ていましたが、出方がすごく中途半端だったと思います。もう少し2人でしっかり話をしたほうがよかったのではないかと思いました。

◇局側

 今回、パラリンピック直前ということになりまして、つくり方としては、選手の紹介、カタログ的なところを主眼にしたというところで、取り扱えなかった部分です。今後の制作に関しましは、もう少し切り口を考えて、新たな部分を視聴者の方にお伝えできるような、そんな放送を心がけていきたいと思っております。また、アナウンサーの出方が中途半端だったというご意見に関しましては、この番組において、アナウンサーは対談の進行役として、毎回配置しております。場合によっては、あまり話が広がらないときもあり、その場合のサポートをする意味合いです。今回は、お二人とも話が弾み、アナウンサーが話している部分はカットしましたので、中途半端に出演しているように見えたのではないかと思います。この番組でいうアナウンサーは、アスリート2人に存分に話していただけるための行司のような立ち位置で考えております。

◎委員

 パラアスリートということで、身構えて見てしまいましたが、実際に見てみると、番組としては普通のスポーツアスリートの番組だと思いました。障がいというよりも、特別の能力という感じで、あまり生活の場面が出てこなかったので、特にパラアスリートは大変だという感じを受けなかったのかもしれません。
 唐澤さんについて興味を引かれたのは、ガイドランナーという存在です。ガイドランナー自身も唐澤さんと同じくらいのペースで走らなければならず、相当な力がないとこれはできないと思います。かつ、安全確保が使命なので、周囲にも気を使わないといけない。特に5000メートルなどは集団で十数人、押し合いながら進むような感じなので、非常に難しい仕事ではないかと思いました。ガイドランナーが本人を引っ張ってしまってはいけないので、さらに難しい仕事、役回りではないかと思い、ガイドランナーについて非常に興味を引かれました。

◇局側

 ガイドランナーに関しまして、今回はパラリンピックに向けての紹介で、放送時間の中で2人を紹介するということがあって、細やかな説明ができなかった部分です。通常の放送回では2人の組み合わせで、前編・後編に分けて放送するのが基本スタイルですので、そのようなときにもう少し踏み込んで、ご説明できたらと思っております。
 あと、生活の場面が出てこなかったというご意見がございました。ほかの放送回では生活の部分も紹介することがあるのですが、今回はパラリンピック前の練習に集中する時期でもあり、選手の取材はかなり絞られていました。それに加えてコロナという危険性がある中で、取材機会が非常に少ない状況でした。今回の3選手に関しましても、公開練習の機会を利用したり、個別取材でもコロナ対策を万全にして行うなど、必要最小限で、かなり取材を絞り込んで、つくっております。そういう状況でしたので、今回は生活感が見えるところは盛り込んでおりません。

◎委員

 スポーツの番組として、大変おもしろかったです。ただ、一貫して、この番組はパラにはスポーツの力があるということが前提で話が進んでいきました。だとしたら、例えば大島さんのときは、何がスポーツの力だったのかということを知りたかったです。
 パラの選手は大きく3通りです。大島さんのような先天性の方と、もう1つは事故に会われた方です。事故ということは、一瞬、事故のときだけが大きな人生イベントで、その後は、「ない状態」で生きていくというのが2つ目のケースです。
 3つ目のケースは、病気の方というのがいらっしゃいます。常に定期的に治療をしながら、パラアスリートをするという選手もいるわけです。その中で、先天性の大島選手はこういうことなんだということがあると、もう少しおもしろいと思いました。

◇局側

 大島選手の場合は、先天的ということで、成長の中で自然とその部分をカバーするようなすべを身につけてこられているのかと思います。
 これに対して、後天的な事故等で障がいを受けた選手に関しましては、今まで普通にできてきたことができないという挫折感、ここから立ち直るきっかけにスポーツが役立っている。または、再び自己肯定感を得る心のよりどころといったものにスポーツが役立っているのではないかと、取材をする折に感じております。
 先天的な障がいと後天的な障がい、バラスポーツにおいてどちらがどうというのはなかなか言えないものでありますが、大島選手の場合でも、「義足で全く苦労していない」とご本人がおっしゃっているのは、あくまで小さいころから慣れ親しんでいる生活用の義足に関する部分で、競技用の義足に関しては、当初使いこなすまでにはかなり苦労があったということです。
 今回、そういった部分を番組の中に盛り込んでいないのは、この選手がかなり急速に力をつけて、記録を伸ばしておりまして、パラリンピック前に期待の選手を紹介するという趣旨で番組をつくった関係上、その部分は省略いたしました。今回、いろいろご意見を伺っておりまして、もう少し丁寧にその部分を扱うべきだったかと今、思っているところです。

◎委員

 こういうテーマは、みんなが予定調和で、扱うのは難しいと足並みをそろえて、探り探りやって何か変なゆがみが出たり、変に偽善的になったり感動的になったりしがちですが、この番組には、感動の押しつけが強くなってくるのがなく、本当にフラットに、自分が思うことを思いながら見れたのはすごくすてきなことだと思いました。
 ただ、その中で、「限界を超えていく」とか、「無限の可能性を」という言葉がありました。聞こえはいいのですが、結局この言葉のもとには「制限」というものがあります。つまり、「障がいに制限を設けた」、それがオープニングで出ていました。選手の人たちやそのご家族が見たときに、もやっとする可能性はあるかと思いました。
 もう一歩踏み込んで、言葉においても、一番適切なものをみんなが心を込めて選べば、もっと変わってくるのではないかと思いました。

◇局側

 番組内の言葉の使い方やナレーションに関しては、常々制作スタッフともども話していますが、まだまだ考えが追いついていなかった部分もあったかと反省しております。言葉に関しては、捉え方によっては、いろんな立場の方でご意見があったり、批判があったりする部分でございますので、正しい使い方としてはどういうものなのか、そういう基準をしっかりこの番組の中でも設けていきたいと思います。

◎委員

 制作スタッフが収録環境の悪化についておっしゃっていましたが、取材するに当たって、今のコロナ禍での環境の悪化というのはみんな共通です。だから、それを言ってはいけない、新しい切り口を語ってほしいと思います。
 全般を見て思ったのは、生まれつき障がいのある人と、後で障がいを受けた人の違いが全然伝わってきません。年齢を重ねて身体能力の衰えを感じるようになった時に、それをどうやってカバーするかなど、そういうことを見せてくれる番組だったらいいと思いました。この番組をいったい誰に見てほしいのか、よくわかりません。制作スタッフの創造力を全く感じませんでした。もっと違うものをつくってもらいたいというのが結論です。

◇局側

 本来、この番組のコンセプトに掲げていたのが、障がい者の方々が未来に向けて大きな夢を持てるような番組ということで企画しました。障がい者の方々が見終わった後に大きな希望を持てるようにというのが本来の目的であったのですが、ここに特化できなかったという反省がございます。『どんなメッセージを、どう発信していけばいいのか』ということを常に念頭に置き、制作に当たらなければなりませんでした。その為には、障がい者の方々と直接触れ合う機会を増やし、様々な声を聴き、その感性をくみ取っていく必要があります。
 実際、その取材に行くことについては、さまざまな制約や規制があって、今後いろんな意味で検討していかなければならないと思います。今後のパラスポーツへの取り組みの1つとして、番組制作の切り口の1つとして考えていく必要があると感じました。

◎委員

 この番組は、視聴者の人生体験によって相当見方が違うというのを、総括的に感じました。私は、今回の番組については割とすらっと見て、タイミングもパラリンピックの前で、障がい者の方のいろんな活躍や努力などを見て、いい番組だなという見方をしました。
 ただ、「夢共演」という割には、塚原さんのほうの話がほとんど出ていませんでしたし、その後の日向さんと唐澤さんの回では、この2人の共演という感じなのかと見ましたが、タイトルとあまり合致してないという感じがしました。

◇局側

 タイトルに関しましては、パラアスリートと健常者アスリート、同じスポーツでありながら、この2つは全く別である、という意識がずっとついておりました。パラアスリートと健常者アスリートが同じ場で言葉を交わすという機会もなかったときに、この番組をスタートしておりますので、意味としましては、「パラアスリート、健常者アスリートが同じ夢を語る共演の場」ということで、このタイトルになっています。今回のこの放送回に関しましては、パラリンピックの選手紹介のところが主題になっており、特に8月14日の放送回は、唐澤選手と日向選手というお二人を取り上げたカタログ形式となっていて、タイトルの主旨とは合致していませんが、パラリンピック直前の特別回であるという認識で制作しております。

*BS-TBSでは、番組審議会委員のご意見を真摯に受け止め、今後の番組内容の向上に活かしていく所存です。