BS-TBS

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放送番組審議会

第72回

2021/03

1.

日 時

2021年3月12日(金)午後4時

2.

審議方法

今回の審議会は、新型コロナウイルスの感染拡大防止の為、リモートでのオンライン審議で行った。

3.

審議会の構成

委員総数 8名

 

参加委員数 7名

 

委員長  末綱隆
副委員長 出井直樹
委員   天野篤 瀬古利彦 寺﨑明 古川柳子 橋口いくよ

 

局側

相子 代表取締役社長
本田 常務取締役
茂川 取締役・編成制作局長
中澤 取締役・番組審議会統括
滝島 編成制作局編成部長
大手 総務局ライツ考査部長
川口 番組審議会事務局長
中尾 番組審議会事務局幹事
高安 番組プロデューサー

4.

議 題

 
 

(1)審議事項

「にっぽん!歴史鑑定」
2K及び4K放送日時:1月25日(月)22:00~22:54

 

(2)その他

(1)審議事項

◎委員

非常にいい番組づくりをされているのではないかと率直に思います。「余計な味つけ」をしないで事実を素直に伝えるなど、そういう部分が感じられる番組だと思いました。番組の内容自体は、テーマを絞っているので、非常にわかりやすかったです。役人が政治家になっていくプロセスがうまく捉えられていました。
白洲次郎さんについてのコメントが入っていたこともよかったと思います。MCの田辺誠一さんは、割といいキャラを発揮されていますが、こういう硬い歴史番組だと、歴史観を持っていそうな、引き出しの多い芸能人のほうがうまく取り回してくれるのかという気がしました。少し抑揚をつけ過ぎかなと感じました。

◎局側

MCの田辺さんは歴史好きではありますが、あくまでも視聴者代表という立場です。『歴史鑑定士』としてスーパーを出していますが、視聴者代表、掘り下げる半歩先を行くための、疑問点を提示する人ということで捉えています。MCに歴史に詳しい人を立たせてしまうと、その人の意見を求める必要も出てくるかと思いました。

◎委員

私は歴史が好きなものですから、すごく興味があり、あっという間の1時間でした。
この番組は、吉田茂のいいところも悪いところも余すところなく、わかりやすく紹介しており、作家の北康利さんの解説も大変よかったと思っております。
戦前戦後の吉田茂の活躍があり、今の平和な日本があると、とても勉強になりました。
これまで取り上げた人を見ると、歴史上の人物などが多いのですが、今までスポーツに関連している人たちの歴史を放送されたことはあるのでしょうか。

◎局側

ございます。例えば、東京オリンピックが日本に決まったときに、1964年の東京オリンピックではなくてその前の東京オリンピック。嘉納治五郎さんが旗を振って日本に決めて、結局、戦争でだめになった。その嘉納治五郎さんがオリンピックをどんな風に招致しようとしたのかというのを取り上げたことがございます。

◎委員

戦後史というのは、学校でもきちんと教えないし、日本の今の形をつくるために何をやってきたのかということは、実はテレビでしか一般の人たちは知る機会がなく、そういう意味でもすごく意味のある番組だったのではないかと思います。
歴史が好きな人にとっても、見ていて満足感があるような背景が表現されていました。これは難しいところで、あまり深く入ってしまうと、普通の人が見たときに難しくなってしまうというところがありますが、その掘りぐあいがとてもいい。とても絶妙なところで表現されていたのではないかと思います。
1つだけ思ったのは、『歴史鑑定』というタイトルがついているので、いい意味でも悪い意味でも日本の形をつくったということ、そこで吉田茂が行ったことが、今日の沖縄の問題や自衛隊の問題など、日本の現在の問題にも尾を引いている部分があります。この辺のところは、事実関係として、言及があってもよかったのではないかという気がしております。
あとは、尺を詰めていくためには、どうしても再現的な演出は必要だったと思いますが、リアルの歴史の映像が非常に強いということもあって、吉田茂という豪胆なキャラクターと再現映像の役者にギャップがあり、そこでふっとリアル感が浮いてしまうところが、映像制作的には残念だったという印象がありましたが、全体として非常に見応えのある番組だったと思いました。

◎局側

最初の構成台本では、現在の日本に対する影響というのもありましたが、いかんせん、尺が54分間しかないということと、あまり現在の政治につながる論点を出すよりも、今回の吉田茂に関しては、主に政策の流れよりも吉田茂の人物像に焦点を、重きを置いたほうが、視聴者を引きつける方向に行くのではないかという判断で、政治的なことに関しては、構成会議の段階で省いた経緯がございます。
再現部分に関しましては、この部分はストップモーション、ここは色を変えてモノクロにしてとか、ここはイラストにしようとか、いろいろと細工をした上で放送にいたりました。伝わる人には伝わってしまうと思いましたので、これからは再現の収録に関しても、もっと努力したいと思います。

◎委員

ターゲットをどのように考えて設定されておられるのか、どのあたりの層を考えておられるのか教えていただければと思います。
続いて、タイトル「にっぽん!歴史鑑定」の『鑑定』について。この回についてはどの謎を解くということなのかがわかりませんでした。どんな風に総理大臣になったということだったのか、それとも戦後のいろいろな問題、それにどう立ち向かったのかということなのか、どの部分の『鑑定』なのかよくわかりませんでした。何の『鑑定』なのかテーマを絞ってもよかったかと思います。吉田茂の人物像をあぶり出すほうが主なのか、それとも政策決定のほうが主なのか。そこがもう少し整理されるとよかったと思います。
あと、吉田茂のリーダーとしての悩みとか、そのあたりのことももう少し出せなかったのかと思います。

◎局側

まず、ターゲットに関しましては、年齢的なターゲットは考えておりません。去年の4月から、番組の最後に、取り上げてほしい時代や人物のアンケートをとり始めておりまして、アンケートを送ってきている年齢層が、10歳以下の方から70代まで、いろいろな層からきていることがわかり、ターゲットを年齢で絞らないほうがよいのではないかと考えております。
何を考えてつくっているのかというと、歴史好きの度合いです。掘りぐあいが絶妙とお褒めの言葉をいただいたのですが、例えば、吉田茂に関しては、人物像や歴史的背景を、なるべく掘り下げたほうがいいと考えました。年齢も考えてないですし、ジェンダーに関しても考えてなく、歴史好きの度合いをターゲットとして、尺度として考えております。
『鑑定』ポイントにつきまして、今回の吉田茂の回に関しては、60歳過ぎて政治家デビューをした吉田茂がどうやってあれだけの急階段を上って内閣総理大臣にまで上り詰めたのか。日本を独立させるに当たり、吉田の手腕の何が際立っていたのか。独立交渉中にGHQマッカーサーと、いかに丁々発止しながら対峙したのか。この3つの柱を1時間の柱にできたらいいと思いながら制作をしました。『鑑定』ポイントがうまく伝わらなかったというご意見は、その辺の詰め方が甘かったと反省して、次に生かしたいと思います。

◎委員

今回、かなり深掘りしてキャラクターを出されている気がしました。「余計な味つけ」をしないとか、事実を素直にと言われておられましたが、吉田茂くらいになると、いろいろな意見があると思います。その人に対する見方、解釈の仕方によって違うので、そのような時はどうするのか。例えば、違う意見も出す捉え方をするのか、それとも、ある程度取り上げた人の感想に基づいて編集をしていくのか。その点はぜひお伺いしてみたいと思いました。

◎局側

人物キャラクターの設定をどうしているかといいますと、例えば、ある人物が歴史的な捉え方で二面性があったりすると、構成会議で、監修の先生のとっている説だけで1時間を構成するのがよいのか、あるいは諸説ありで、こういう考え方、こういう捉え方もあるというふうに諸説を説明していくほうが番組としておもしろくなるのか。毎回、取り上げる事件や人物などを伝えるときに、どちらをとればおもしろくなるかということを、構成会議を経て決めております。

◎委員

最初の印象としては、すごく二分化される番組だと思いました。教科書のように見るというのであれば、教科書よりずっとわかりやすいし、おもしろい。けれども、知的エンターテインメント番組とあるので、エンターテインメントという視点で言うと、学校の授業が始まるみたいに感じなくもないかと思いました。
原因を考えたときに、オープニングが戦争のシーンから始まります。あれを見せられると、「学校の授業が始まる、何かを教えられるんだ」というふうに構えてしまうところがあると思いました。そこを例えば、後で出てきた白馬に乗っている映像が最初に出てくると、吉田茂ってどんな人だろうと思って、ぐっと入り込めると思います。大人も子どももおもしろいという空気感をうまくつくりながら中に引き込んでくれると、番組に入っていきやすいと思いました。あらゆる世代や家族で見るという部分まで考えると、そこまでのサービスがあるとうれしいと思いました。言葉は悪いですけど、オープニングでだましてほしいというところがあります。

◎局側

オープニングでだますという手法は大いに取り入れさせていただこうと思います。
この番組は毎回、浅く広くのほうがいいのか、深く掘ったほうがいいのか、本当に思い悩んでおります。教科書よりわかりやすくしたとすると、内容が簡単過ぎるという声が増えてくるでしょうし、エンターテインメント風に振ると、そんな番組を見たいのではないというリアクションも多々あったりして、そこが一番難しいところだったりします。いろいろ試行錯誤しながら、まずはオープニングでだますところから手をつけられればと思います。

◎委員

戦後の日本の転換期から今の繁栄状況をうまくつくったという意味において、相当いろいろな決断をされています。吉田茂本人の腹の据わりぐあい。アメリカの憲法の草案を受け入れる話や、講和条約を結ぶときの、独立後のアメリカ軍の駐留などです。秘密交渉でそういうのをやったといったようなことなど、非常に腹が据わっています。
ただ、相手の言うことを聞かないというだけではなく、うまく相手のメンツを立てて、こちらのやりたいことを進めるような戦略がすばらしいということがよくわかりました。
今の日本を考えると、かなり曲がり角にきているので、今、吉田茂のような政治家がいるといいなと思いました。今、日本で一番欠けているのは、グローバルな視点です。ほかの国が何を考えているのか、あるいは、ほかの国の経済状況はどうなのかということをよくわかった上での政治が非常に重要だと思います。
吉田茂は、「繁栄なくして平和はない」ということをコメントしています。日本は、豊かさの面で見ると、一人当たりのGDPは、2位から現在は25位まで落ちています。一人当たりのGDPが10位以内に入っている国というと、ルクセンブルクやスイス、アイルランド、ノルウェー、アイスランド、デンマークなど、普通の旅番組で取り上げられる国とは違う国です。逆に言うと、そういう国が、なぜ一人一人の稼ぎが大きいのかというのをうまく取りまぜたような旅番組もやっていただけると、日本の国から見ると参考になるのではないかという気持ちを持ちました。吉田茂の「繁栄なくして平和はない」という言葉を聞いたときに、そういう想像が広がりました。

◎局側

以前に、GDPではなく、別の見方をした豊かさを持つ国の謎を解くというアプローチはおもしろいという話が出たことがありました。壮大なスケール感のある「地球絶景」やきれいな映像からさらに新しい価値観を創造する、きれいの源流はどこにあるのかというところを、人々の豊かさの面で切りとっていくのはおもしろい話だと思いますので、活かしていきたいと思います。

*BS-TBSでは、番組審議会委員のご意見を真摯に受け止め、今後の番組内容の向上に活かしていく所存です。