2015年1月6日
18:00~20:54放送
- 旅人
- 清水宏保・中村真衣
#27「五輪メダリストが目指す “本州最北端&最南端”」
五輪メダリストが本州最北端・最南端を目指す3時間のスペシャル。
元スピードスケート選手で長野オリンピック金メダリスト、清水宏保さんの旅のはじまりは三重県・伊勢市駅。広大な海岸線と大自然に恵まれた日本列島最大の半島、紀伊半島を南下し、冬の旬を探しながら、路線バスで本州最南端を目指します。
伊勢市駅を出発しておよそ2時間。「注連指口(しめさすぐち)」で路線バスのネットワークは一旦途切れてしまいます。和歌山方面に向かうバス停までは、ここから徒歩40分。ちょっと不安なスタートとなりましたが、道すがら名産の伊勢茶を振る舞ってもらい、ホッと一息。三重県は静岡、鹿児島に次ぐお茶どころなんです。
無事、和歌山方面のバスに乗った清水さんですが、愉快な名前に惹かれ、「マンボウ」バス停で途中下車してみることに。目の前には道の駅「紀伊長島マンボウ」がありました。その名の通り、マンボウの串焼きを売る屋台もあれば、今が旬の“渡利牡蠣”の屋台も。汽水の白石湖で養殖される“渡利牡蠣”は、生産量が限られた、いわば幻の牡蠣。その美味しさに清水さんもびっくりです。
旅の二日目は三重熊野の玄関口、鬼ヶ城からスタート。ダイナミックな海食洞が1㎞にわたって連なる名勝です。鬼ヶ城も、すぐそばの熊野古道も、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部。美しい石畳が残る熊野古道を歩いて、松本峠へ向かうと…そこには熊野灘の絶景が広がっていました。
熊野灘に面し、鬼ケ城から20数㎞(約七里)続くのが七里御浜。日本で最も長い砂礫海岸で、やはり世界遺産の一部となっています。こちらの冬の風物詩は“サンマすだれ干し”。熊野灘でとれたサンマを、まるごと竿に吊るして天日干しするもので、大量のサンマが陽の光を受けてキラキラ輝く様子は壮観です。町で焼いてもらった“サンマ丸干し”は感動の美味!すし飯の上に尾頭付きのサンマをのせた“さんま寿司”も、熊野名物です。
海岸線を離れ、山の奥深くへ向かうバスに乗った清水さん。まさに熊野の世界遺産の象徴ともいうべき、熊野本宮大社へ。熊野三山の一つで、全国の熊野神社の総本社です。古式ゆかしい社殿もさることながら、旧社地・大斎原(おおゆのはら)にたつ日本最大級の大鳥居もお見逃しなく。
聖地で運気を上げたあとは、温泉でリフレッシュ。今宵の宿は川湯温泉に決めました。古来、熊野詣での人たちが旅の疲れを癒した由緒ある温泉です。今は「仙人風呂」がある温泉として大人気。「仙人風呂」とは、川の流量が減る冬季、川をせき止めて作る巨大な露天風呂のこと。川底から湧いてくる源泉に清流が流れ込み、野趣あふれる入湯体験ができます。
旅の三日目。川湯温泉を出発し、いよいよ最終目的地である本州最南端・潮岬を目指します。岬の眼下に広がる太平洋の大海原は圧倒的なスケール!雄大な自然と人々の営みが織りなす紀伊半島の風土にふれ、冬にはもってこいのパワーチャージの旅となりました。
元競泳選手でシドニーオリンピック銀メダリスト、中村真衣さんの旅のはじまりは、青森県・野辺地駅。豊富な海の幸で知られる下北半島を北上し、冬の旬を探しながら、路線バスで本州最北端を目指します。
聞けば、野辺地はホタテ養殖が盛んな地。北に向かう路線バスを待つ間、漁港に立ち寄ってみることに。すると、運よくホタテが水揚げされたところ。中村さん、とれたてのホタテに思わず舌鼓。
野辺地から路線バスで向かったのは、下北半島の中心地、むつ市内。ここで見るからに老舗の「関乃井酒造」をみつけました。下北半島唯一にして、本州最北端の造り酒屋です。下北半島以外には殆ど出荷していないという希少な地酒で、冷え切った体もポカポカ。
続いて下北半島北東部の尻屋へ。かつて南部藩の牧場があったところで、今でも南部馬を祖にもつ“寒立馬”が放牧されています。寒風吹きすさぶ雪原に暮らす寒立馬。極寒に耐え、逞しく生きる姿は、見るものすべてに深い感動と勇気を与えてくれます。
青森ヒバの木立に囲まれた薬研温泉に宿をとり、旅の疲れを癒やした中村さん。
二日目。やって来たのは下北半島北西部、津軽海峡に面した風間浦村。冬が旬のアンコウの漁が盛んな村です。中村さんは蛇浦漁港から漁船に乗せてもらい、本格的なアンコウ漁にチャレンジ。生きたまま釣り揚げる“刺し網漁”、アンコウの通り道に仕掛けた網を引き揚げて行くんですが…活きのいいアンコウが1匹ひっかかっていました!とれたてのアンコウは、村の旅館でさばいてもらうことに。風間浦村には、数百年もの間、湯治場として親しまれてきた「下風呂温泉郷」があり、風情ある温泉旅館が軒を連ねています。今夜の宿も下風呂温泉郷に決めた中村さん。近くにある、露天風呂が自慢の桑畑温泉も訪ね、温泉三昧。旬の絶品アンコウ料理に温泉。下北半島の、冬の醍醐味を満喫できました。
明けて三日目。本州最北端に向かう前に、むつ市に戻って脇野沢へ。陸奥湾に面したこの村は“北限のサル”によって、世界にその名を知られています。北限のサルとは、この辺りに暮らすニホンザルのこと。ヒト以外の霊長類では、世界で最も北に生息していることから、このように呼ばれています。その野生の姿を一目見たいとやって来た中村さんですが、なんせ野生ですから、どこにいるのか分かりません。そこで北限のサルを研究してきた村在住の動物写真家・松岡史朗さんに案内していただきました。木立の中でみつけたサルは、毛が長くてふさふさ。寒さから身を守るため、冬場は長く密生する冬毛に生え替わるんです。しかも他の地方に暮らすサルと比べて、身体が大きいそう。大きな身体の方が体温を奪われにくいので、こうした体形になったとのこと。
そして遂に、最終目的地である本州最北端、大間崎へ。バス停からも対岸の函館が見渡せ、本州のてっぺんに来たことを実感させてくれます。さて、大間と言えば誰しも思い浮かぶのがマグロ。驚異の高値がつくたびに、ニュースになりますよね。さぁ、その高級魚は一体どこに?漁港に寄ってみましたが、人の気配もありません。何とか漁師さんを探し出して、見せてもらうと…優に100㎏を超すマグロが。その大きさにびっくりです。平成6年に水揚げされた440kgのマグロの実物大モニュメントが迎えてくれる、本州最北端・大間崎。まさに津軽海峡冬景色を一望し、感動もひとしおです。
大自然は下北半島に厳しい冬の寒さをもたらしますが、その恵みは越冬に足るエネルギーを授けてくれます。本州最北端への旅では、自然に抱かれて生きる術を身につけた人々、そして極寒に耐える健気な動物たちに、いっぱいの元気をもらうことができました。