AQUOS美術館 かくて名画は生まれた。

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毎週土曜日よる22:00〜22:30
毎週日曜日7:00〜7:30再放送

今から100年以上も前に描かれた一枚の絵画。
名画の放つ色彩…そしてその筆遣い。
画家が持てる情熱を全て注ぎ込んだ絵画に向き合う時、あなたはそこに何を見るであろうか?

絵画の数だけドラマがある。そして見る者の数だけ感動がある。
絵画は人生を変える。画家も、そして見る者さえも…

スーラ Georges Seurat

#11 「アニエールの水浴」

6月14日O.A. (6月15日7:00 再放送)
9月13日O.A. (14日再放送)
声の出演 津田寛治(スーラ役)
テーマ音楽:宮川彬良
『アニエールの水浴』

「アニエールの水浴」

所蔵:ナショナル・ギャラリー(イギリス・ロンドン)

スーラは、一見和やかな日常の風景の中に潜む、残酷なまでの時代の内なる本質を描こうとした画家だった。2年の歳月をかけて完成した「アニエールの水浴」。
パリ郊外のアニエールで余暇の時間を送る人々を描いている。
よく見てみると描かれている人々には顔がない。そして、穏やかな休日が描かれているようで、川の向こうには工業地帯が見える。
実は、この作品には後にスーラ独自の作風につながる重要な鍵が隠されていた。そしてそれは、彼の生い立ち、そして彼が受けた教育と深く結びついていた。
そもそも色とは何か?そして光とは何なのか?彼は研究に研究を重ね、ついにその答えを見つけた。彼がみつけたそのルネッサンス以来の画期的な手法とは?

スーラのパレット

スーラのパレット

裕福なブルジョア家庭に育ったスーラ。彼は名門・国立美術学校でアカデミックな教育を受けた。その頃の教育はいわゆる理想美の追求が主流。しかし、スーラは授業そっちのけで毎日のようにルーヴル美術館に通い、模写をして時間を過ごした。数多くの芸術作品が若き美学生スーラを迎え、彼の心を大きく揺さぶった。名画が放つ色彩の美しさ、その表現力。学校教育では得ることのできない目の当たりにしたスーラは次第に色彩の魅力に取り付かれていった。


アニエールで写生するスーラ

アニエールで写生するスーラ

スーラが確立したルネッサンス以来の画期的手法「点描画法」のキャンバスを埋める小さな点。その色はお互いに反応して、人間の目の中で混ざることでより鮮やかな色へと変化する。スーラの絵の特徴は光と色彩である。点描で描かれた絵画は見る距離によって奥行きが生まれる。光を鮮明に描くためには離れた距離から見ることで、視覚混合の効果を生み出す必要があった。「アニエールの水浴」は点描で描かれてはいないが、この作品こそが点描画法を生み出す原点だったのだ。

ジョルジュ・スーラ
Georges Seurat (1859―1891)

直感的に描く印象派芸術の筆触分割の技法を光学、色彩の面から科学的に分析し、規則的な点描によって画面をつくりあげる独自の絵画技法を作った新印象派の代表的画家。作品を仕上げるまでに多数の素描や下絵を制作して、入念に構想を練り、かなりの時間を要して数々の大作を完成させた。パリのブルジョア家庭に育ち、私生活については秘密主義を貫いた。