今週のドル円相場は、週明けの東京市場から日本株高を見越したドル買い円売りが先行。安倍首相の所信表明演説を前にした思惑的なドル買いが観測されると109.75円まで値を上げた。海外市場では、米長期金利の上昇などを受けて、一時、109.86円までドルが上昇。更に、10月に入ると110.00円を上抜け、目先のストップロスを巻き込みながら、一時、110.09円と2008年8月25日以来の高値を付けた。ただ、その直後に、110.10円にまとまったドル売りオーダーが観測されると、一転してドル売りが強まる展開に。NY市場で米長期金利が急低下したこともドル売りを誘った。2日にはドラギECB総裁が、資産購入プログラムの詳細を発表したが、全般的に消極的な内容にとどまったほか、国債を買い入れる量的緩和が見送られたことから欧州の株式市場が急落。日経平均先物も下落し、それに連れてドル円相場は、一時、108.01円まで売り込まれた。もっとも、週末のアジア市場では、「本邦長期資金の買いが断続的に観測」され、109円近辺まで値を戻している。
市場にはドル円が110円台をつけたことで、目先の「達成感」のようなものが台頭している。ドル高の方向性は変ってはいないが、高値から2円以上も急落したことで、市場にあった過熱感は冷されたと言えるだろう。
今週、臨時国会が始まり、「地方創生」と「女性の活躍」がテーマとされている。その地方創生に絡むことだが、このところの円安が地方経済に悪影響を及ぼしている、との指摘が出始めている。実際、東京より地方のほうが物価上昇率が高いという結果が出ていたり、円安の進展で上場企業は収益を拡大できるが、非上場企業は逆に収益が悪化する、との試算もある。そうした経済環境の中で地方が国会のテーマになっているわけで、今後は、過度な円安への警戒感を示すような発言が政府側から出てくるかもしれない。
また、1日にNY市場で観測されたような米長期金利の急激な低下や香港の民主派デモの行方は今後のリスク要因。いずれもドル売りを誘うニュースとして注視しておく必要があるだろう。
来週のドル円相場はドルの下値が堅い動きとなるものの、やはり神経質な展開となりそうだ。依然として本邦長期資金の買い意欲は強く、また、海外のファンド勢は今週末までに一定のポジション調整を終えていることから、次第に下値が切り上がる動きを予想している。下値では、2日の安値108.01円が目先の目処として意識されているほか、9月12日の安値107.39円がサポートレベルとなっている。上値では、1日の高値110.09円がとりあえずの目処となっているが、2008年8月15日の高値110.67円もレジスタンスレベルとして意識されている。
来週は6-7日に日銀金融政策決定会合、8日にはFOMC議事要旨(9月16-17日分)、9-10日にはG20財務大臣中央銀行総裁会議などが予定されている。また、6日の23時以降には米労働市場状況指数(LMCI)が初めて公表される。LMCIは、イエレンFRB議長も言及しているように、FOMCが労働市場を判断する上で最も重要視している指標。市場の注目が一手に集まる可能性が高い。