今週のドルは頭の重い展開となった。週明けは、日本の1-3月期GDP改定値が市場予想を上回る強い数字だったことから、株高への期待が膨らみドル買い円売りが先行。一時、102.65円までドル高が進んだ。しかし、このレベルでは、一目均衡表雲上限の位置する102.66円が戻りの目処として意識された他、週末にかけては、米10年債利回りが急激に低下したことなどから、一時、101.60円の安値までドルは売り込まれている。5月の米小売売上高が市場予想を下回ったことやイラク情勢の緊迫化でダウ平均が下落したこともドル売りを後押しした。ただ、ドルのレベルでは、200日移動平均線が位置する101.54円が目先の目処として意識された他、本邦実需勢を中心にしたドル買い円売りも少なくなく、その後は落ち着いた動きとなっている。
日銀は12-13日に開催された金融政策決定会合で、「量的・質的金融緩和」の継続を決定した。これまでの黒田総裁の発言などから、市場の追加緩和期待は以前のように高まることはなく、今回の決定への反応は限定的となっている。今後については、株価対策としてのETF買取り額増額などの可能性が残されている。しかし、今回の会見でも黒田総裁は、「上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」などとしながらも、「夏場以降、反動減の影響が減衰し、潜在成長率を上回る成長経路に復帰する確度は高い」と強気の見通しを示しており、来月も現状維持が基本路線という印象が強い。市場で追加緩和期待感が再び高まることは、暫く無さそうだ。
また、市場では、先月末から「アベノミクス相場」を再び試したいとの動きが海外勢を中心に見られたが、ここにきて足踏み状態となった。その要因として次のことが考えられる。まず、1点目はGPIF。GPIFの運用委員長が「政府から要請があれば(資産運用の見直しについて)8月にも発表する可能性がある」と発言していたことから期待が膨らんでいたが、先日、「秋になる」と政府が発表したことで、先送りムードになってしまった。2点目は成長戦略だ。安倍首相が聖域にメスを入れる農業改革に乗り出したが、その後、自民党側から強烈な巻き戻しがあり内容が後退、玉虫色に変わってしまった。これが、少なからず投資家の失望を買っている。ファンド勢は、いずれポジション構築に動くことが予想されるが、目先はスローな状態が続くと見ておいたほうがよさそうだ。
今週のドル円は神経質な動きを予想している。下値では、200日移動平均線の位置する101.54円や5月29日の安値101.425円が目先の目処として意識されている。上値では、一目均衡表転換線の102.20円や一目均衡表雲下限の102.47円がとりあえずの目処となっているが、一目均衡表雲上限の102.66円や5月2日の高値103.025円がレジスタンスレベルとして意識されている。また、101円台での本邦実需勢のドル買い意欲も強く、下押しを丁寧に拾っていきたいところだ。
ユーロ円は、ユーロドルが5日の安値1.3503ドルが重要なサポートレベルとして意識されていることもあり、この水準を維持できるならば、ある程度の買い戻しも期待できそうだ。
来週は18日にFOMCが開催される。同時にFOMCメンバーの経済金利見通しも公表されるほか、イエレンFRB議長の定例記者会見も予定されている。今回からフィッシャーFRB副議長やブレイナードFRB理事、パウエルFRB理事が新たにメンバーとして正式に加わることから、声明文の変化などには注意が必要だろう。