今週のドル円は上値の重い展開となった。週明けから日経平均の上昇を受けて買いが先行。一時102.73円まで値を上げる場面もみられたが、102円台後半から103円台に並ぶ本邦大手輸出企業のドル売りに頭を抑えられると、次第に上値を切り下げる動きとなった。週末にむけてはオバマ米大統領が国賓として来日。日米首脳会談に期待感が高まったものの、TPP交渉が難航したことで、市場は神経質な動きに終始した。結局、TPP交渉は日米首脳会談後も決着が付かずに交渉が継続となり、市場には失望感が広がった。24日のNY市場では一時102.08円まで円高ドル安が進んでいる。ただ、GWを前にして本邦実需勢のドル買い意欲も強く、その後は102円台半ばでのもみ合いに終始した。
市場参加者からは「終値ベースで一目均衡表雲下限の位置する102.40円がポイント」との声も聞かれており、テクニカル的にも神経質な動きとなった。現状では、テクニカル上のポイント(一目均衡表転換線の)102.11円と(一目均衡表基準線の)102.73円に挟まれたレンジ相場となっており、上下ともしっかりと抜けてくるには材料不足となっている。
今週の注目は、オバマ米大統領の訪日。国賓としてはクリントン大統領以来18年ぶりだが、ミシェル夫人の同行はなく、迎賓館での宿泊もない、異例づくしの来日だった。
それでも、1996年以来の国賓待遇で迎えた日米首脳会談が何の成果も挙げられなかった、ということになれば、それを市場がどう受けとめるのか。アベノミクスにとって、それが、どれほどの危険性を孕んでいるかは明らかで、フロマン米USTR代表と甘利経済再生担当相は、この2週間、40時間を越える時を共にし、TPPの大筋合意を目指して交渉を続けていた。
23日。安倍首相はオバマ米大統領を銀座の「すきやばし次郎」で迎えた。日本一の寿司職人が饗するスシディナーにオバマ米大統領は「人生で初めてこのような美味いスシをいただいた」と絶賛。二人は、日本酒をたしなみながら「牛」と「豚」の話を交わすとともに、個人的な友好関係の構築に努めたことだろう。
懸案のTPP交渉は、このスシディナーの終了後も夜を徹して行われ、更に、翌24日の日米首脳会談後もなおも協議が続けられるという異例の展開となった。しかし、それでも大筋合意には至らず、日米共同声明は、25日、オバマ米大統領が離日してからまとめられるという、最後まで異例づくしの交渉となった。
その日米共同声明であるが、TPPに関し「重要な課題について前進する道筋は特定した」とし、更に「必要な大胆な措置を取る」と強調した。「TPPの妥結にはまだ作業が残されている」との文言もあったが、市場は前向きな表現が盛り込まれたと評価、日経平均は一時150円近く上昇した。しかし、持続力はなく、次第に前日の終値近辺まで押し戻され、ドル円も、一時102.495円までドル買い円売りが進んだが、反応は限定的となっている。
ドル円は、神経質な展開を予想している。日本がGWに入ることもあり、本邦勢は引き続き実需中心の動きとなりそうだ。週末には4月の米雇用統計を控えており、それまでは株価などを睨むことになる。下値では、16日の安値101.81円や11日の安値101.32円がサポートレベルとなっている。上値では、8日の高値103,12円や4日の高値104.13円がレジスタンスレベルとして意識されている。
30日には日銀金融政策決定会合が開催され「日銀展望レポート」がまとめられる予定。一部では「成長率など下方修正される見込み」と報じられており、ETF買取りの増額など追加金融緩和策が決定される可能性も囁かれている。また、週末の米雇用統計にも注目したい。