今週のドル円は底堅い動きとなった。前週末に行われたクリミア自治共和国でのロシア編入を問う住民投票が圧倒的多数で編入合意されたことから、ウクライナ情勢への懸念が再び高まり、週明け早朝にはドル安円高が進行。一時1ドル=101円23銭の安値を付けた。しかし大規模な軍事的衝突が回避されたことから、その後はドルの買戻しが先行した。
さらに19日の会見でFRBのイエレン議長が、早ければ来春にもゼロ金利政策を打ち切り、利上げに踏み切るとも取れる発言をしたことから、市場では一気にドル高が進行。一時1ドル=102円69銭までドルが買い進められた。
18-19日に開かれたFOMCでは、量的緩和に伴う資産買い入れ額を、4月から550億ドルに縮小すると決定した。100億ドルという減額幅は大方の予想通りで、市場も大きな反応は示さなかった。しかしFOMC終了後の会見でイエレン議長が、量的緩和を終了した後にゼロ金利政策を続ける「相当の期間」について、「6ヵ月程度」とのメドを示したことが大きなサプライズとなり、市場は一気にドル買いに走った。イエレン議長は「今秋にも量的緩和を終了する」との見通しを示しているため、利上げの時期は早ければ来年の春ということになる。
さらに、声明文と同時に発表された「経済金利見通し」では、2015年末の適切なFF金利は1%と予想するFOMCメンバーが最多となった。仮に来春から利上げが始まったとすると、現状の0.25%から3四半期後には0.75%もの利上げに踏み切る計算になる。0.25%ずつ引き上げていくとすると、3回の利上げを想定していることにもなり、イエレン新体制は、初めてのFOMCでかなりタカ派的な姿勢を示したことになる。
来週のドル円は、再びドル高が加速する可能性が出てきた。決算期末を控えた日本企業の駆け込み的なドル買いが予想されるほか、米国の利上げ前倒し観測が台頭していることもあり、当面の高値のメドとされる1ドル=104円台に向けて動きが出てくるかも知れない。
ただ引き続きウクライナ情勢には注意が必要なほか、中国経済の動向にも気を配る必要がある。24日には3月のHSBC製造業購買担当者景気指数(PMI)が発表されるため、ここで市場の予想を超える悪い数字が出ると、ドル高トレンドに冷水を浴びせることも予想される。