今週の外国為替市場は、再びウクライナ情勢に神経質な展開となった。オバマ米大統領がロシアに対して強硬な姿勢を示すなど、ウクライナを巡る欧米とロシアの緊張が高まったことを受けて、週初には1ドル=103円台で推移していたドル円相場も、週後半には101円台半ばまで円高に。相対的に安全とされる円が買い戻される展開となった。13日(木)の東京市場では101円54銭の高値をつけている。
この円高を受けて、週末14日の株式市場では日経平均が一時500円余り値下がり。終値でも今年3番目の大幅な急落となった。中国で理財商品のデフォルトが増えるのではとの懸念が台頭していることや、相次ぐテロで社会不安が広がっていることもマイナスに働いた。
ウクライナ情勢を巡る欧米とロシアの非難の応酬は来週、さらに激しくなる恐れがある。16日にはクリミア自治共和国のウクライナからの独立を問う住民投票が予定されているが、米国とEUは「非合法的な投票」と非難。住民投票が予定通り行われれば、17日には厳しい制裁措置に踏み切る構えで、さらに緊張が激化する可能性が強い。
一方の中国では、李克強首相が金融商品のデフォルトを容認する姿勢を示したことが反響を呼んでいる。
中国の金融商品はこれまで、地方政府などがデフォルト回避のための救済措置を講じてきたとされている。李首相が今回、個別商品のデフォルトは避けられないとの方針を打ち出したことについて、市場では「中国の金融市場健全化に向けた一歩」と評価する声が出ている。しかし、デフォルトのリスクが顕在化したことを受けて、中国国内では理財商品への不安が広がっており、取り付け騒ぎなどでデフォルトの連鎖も懸念されている。
ウクライナ情勢の緊張と、中国の金融不安。日本経済にとっては、どちらも円高・株安要因になる可能性が高く、市場関係者も目が離せない状況が続きそうだ。
ドル円は今週後半に一時1ドル=101円台半ばまで円高が進んだものの、この水準では3月の決算を控えた日本企業のドル買い意欲が強く、実需面では円高が加速する可能性は低い。
ただ16日にクリミア自治共和国の住民投票が予定通り行われた場合、ロシアと欧米の緊張が一気に高まる恐れもあり、神経質な展開が続きそうだ。逆にウクライナ情勢が落ち着きを取り戻した場合は、円安基調が復活することも考えられる。