今週のドル円は1ドル=102円を挟んで方向感の乏しい動きとなった。1月の米新築住宅販売件数が好調だったことを受けて、一時は102円61銭までドルが買い戻された。ただ、ウクライナ情勢が緊迫化したほか、中国でも理財商品のデフォルトなどの懸念材料が台頭したことから、比較的安全とされる円への資金シフトが加速。一時101円台半ばまでドル安円高が進んだ。
先週末にシドニーで開かれたG20財務大臣中央銀行総裁会議。G20参加国がすべて同意した声明文が公表された。5年間で全体のGDPを2%引き上げるという数値目標を初めて設定したものの、市場の反応はほとんどみられなかった。余りにも大まかな目標設定で、ゴールに向けての具体的な道筋が示されている訳ではないことから、「反応の仕様がない」という冷めた受け止め方が大勢だったようだ。
むしろ今回の共同声明では、「いくつかの重要なテールリスクが低下した」との表現で、新興国の通貨危機のリスクが後退したとの認識を示したことに注目したい。G20の中央銀行は、金融政策の決定に際しては情報交換を密にするとともに、「世界経済への影響に配慮する」との方針を打ち出し、アメリカの量的緩和の縮小が新興国に与える影響にも留意する必要があるとの考えを示している。
こうしたG20のコミットメントを受けて、市場では新興国への不安が収束しつつあるようにみえる。ただ中国で理財商品のデフォルトや株安といった、新たな懸念材料が台頭するなど、やはり火種は燻っている。FRBの緩和縮小のスピード次第で、新興国通貨への不安が再燃するリスクには、引き続き注意を払いたい。
来週は米国の2月の雇用統計の発表を控えて、神経質な展開が予想される。非農業部門の雇用者数の伸びが2ヶ月連続で低調だったのは豪雪の影響が大きいとされているが、2月の数字も低調だった場合に、市場がこれをどう解釈するか微妙な状況だ。
また、6日に開かれるECBの定例理事会では、政策金利の引き下げが行われるかどうかが焦点。市場の見方は定まっていないため、結果次第ではユーロ相場が乱高下する恐れもある。
ドル円相場は、米国経済の強さが確認されれば、1ドル=103円台に向けて円安トレンドが復活する可能性が強い。逆に米国の景気の先行きに懸念が強まるようなことになれば、100円台までの円高も考えておく必要がある。