今週は11日にイエレンFRB議長が就任して初めての議会証言が行われたが、新体制下でも従来の超低金利政策を継続することが確認された。量的緩和の規模縮小も予定通りに実施する方針が示されたが、ドル円相場は一時102円71銭までドルが買い戻された。ダウ平均株価も上昇。バーナンキ前議長の路線を基本的に継承するイエレン議長の金融政策が、市場の信任を得た形となった。
6時間超という異例のロングランとなったイエレンFRB議長の下院金融サービス委員会での公聴会。議会の関心の高さをうかがわせる結果となったが、この場でイエレン議長は、量的緩和の縮小を一定規模で継続する方針を表明。一方で相当な長期間、超低金利などの極めて緩和的な政策を維持する考えを強調。これが市場の安心感につながった。
またイエレン議長は12月と1月の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数が事前の予想を大幅に下回ったことについて、「非常に驚いた」と正直な感想を述べたものの、「この数字が何を意味しているのかを即座に結論付けないように注意しなければならない」と今後の数字などを見極めたいとの認識も示している。
一方、アルゼンチン・リラの暴落をきっかけに始まった新興国通貨の波乱については、「直近の国際金融市場の変動は注視している」としたうえで、「現時点では米経済の実質的リスクではない」と述べ、金融政策面で配慮する考えがないことを示唆した。
新興国市場の混乱は、一旦は落ち着いたように見えるものの、トルコ・リラや南アフリカ・ランドは1月中旬の水準に戻っただけで、12月に下落した分までは回復していない。アルゼンチン、ブラジル、インド、南アフリカ、トルコなど経常収支が大幅に悪化している国々は、今後も市場のターゲットにされるリスクをはらんでいる。緩和の規模縮小に伴う副作用(不安定な相場展開)は、しばらくは続く恐れが強いと認識しておくべきだろう。
来週は、新興国通貨の波乱の一因となった中国の製造業購買担当者景気指数=PMIの2月速報値が発表される。また一覧表には出ていないが、トルコの金融政策決定会合も18日に予定されているほか、先月28-29のFOMC議事要旨も公表される。いずれも今後の新興国市場の動向を占ううえで注目したい。週末にシドニーで開かれるG20=財務相・中央銀行総裁会議で、何らかのメッセージが示されるかにも注意が必要だろう。
ドル円相場は、1ドル=101円台に日本の輸出企業の旺盛なドル買い需要が控えているため、この水準を抜けて円高ドル安が進む可能性は低い。ただ、新興国市場で何らかの波乱が起きた場合は、比較的安全とされる円資産への資金逃避が再び加速する可能性もあり、神経質な展開が予想される。