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2014年1月25日放送

今週は、カナダのドルが急落した。対米ドルでは一時1米ドル=1.1174加ドルまで加ドル安が進んだほか、対円でも1加ドル=92円42銭まで円高・加ドル安に振れた。

この急落の原因を作ったのが、22日に開かれたカナダの中央銀行BOCの政策決定会合。政策金利は据え置かれたものの、声明文で「インフレの下振れリスクの重要性が増している」と表明。市場では瞬く間に加ドル売りの動きが広がった。声明文では、昨年9月まで利上げの可能性を示唆していただけに、今回の利下げ示唆ともとれるハト派的な見解に、市場は驚きを隠せないでいる。

さらに23日のNY市場では、アルゼンチン・ペソが暴落。通貨危機が再燃するのではとの懸念も台頭し、新興国の通貨が売られ、相対的に安全とみなされた円を買う動きが広がった。中国でも景気の先行きに対する懸念が台頭。FRBのテーパリング開始の副作用とみられる現象が相次ぎ、米国でも株価が急落している。

米国では28-29日に予定されているFOMCを控えて、WSJのFEDウォッチャー、ヒルゼンラス記者が「100億ドルの資産買取り減額の公算」との見解を示したことが話題となった。12月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数の伸びが減少したことについて、FOMCのメンバーは一時的な現象との認識を変えておらず、むしろ失業率が6・7%に低下したことについて「労働市場の逼迫」とみている可能性が高いという。金融緩和規模の縮小=テーパリングが加速することも否定できない。

一方、日本では21-22日に日銀の金融政策決定会合が開催された。一部では「追加金融緩和」を期待する声もあったが、黒田総裁は「マネタリーベースが年間約60-70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」と述べ、従来の量的・質的緩和の継続を決定した。ただ、2月に成長融資の支援枠拡大の検討を行うとの観測も出ているほか、4月の消費税率引き上げに合わせて、その他の追加緩和が実施される可能性は高い。政府・日銀が一体となって、増税に伴う景気減速感を払拭しようという構えだ。

米国がテーパリングの加速、日本が追加緩和に踏み切れば、円安ドル高が加速するのは自然な流れ。こうした動きを受けて市場が再びアベノミクス相場を大きく形成していく可能性もある。

23日のアルゼンチン・ペソの暴落をきっかけとした新興国通貨の下落を受けて、米ドルは対円で大幅に値下がりし、一時1ドル=102円97銭まで売り込まれる場面もみられた。しかし日本の輸出企業を中心に、ドル買いニーズは依然として強く、テクニカル指標からみても102円台を割り込んでドル安円高が進むとは考えにくい。

一方でドルの上値は、相変わらず1ドル=105円の水準が強い抵抗線となっている。アルゼンチンや中国などの新興国経済への懸念が広がるようだと、さらなる円安は遠のくかもしれないが、不安が沈静化に向かえば、再び円安ドル高のトレンドに戻るだろう。日米の金融政策のベクトルは正反対の方向を向いており、一度105円の水準を突破すると、円安が再加速する可能性もある。

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