NY市場のダウ平均株価は、FOMCで資産買い取りの縮小が見送られたことを受けて買いが加速。18日には一時1万5709ドル58セントまで値を上げた。ただ、翌日からは一転売りが先行する展開となり、25日まで5営業日連続の下げとなった。一時は1万5253ドル16セントまで下落。450ドルを越える下げ幅となっている。翌26日にはさすがに買い戻しの動きもみられたが、戻りは鈍い。市場では、量的緩和の縮小開始時期について、10月末のFOMCで決定される可能性も残っているとの見方もあり、投資家の心理は一方向には定まっていない。
市場が方向性を見出せないでいるなか、投資家の話題を集めたのが日本のトップセールスマン、安倍首相の3つの単語「BUY MY ABENOMICS」だった。
「BUY MY ABENOMICS」は、映画「ウォール・ストリート」でマイケル・ダグラス扮するゴードン・ゲッコーのスピーチ「BUY MY BOOK」を連想させるフレーズ。25日にNY株式市場のクロージングベルを鳴らした安倍首相、自らのアベノミクスを売り込むだけでなく、リニアなら「ワシントンとNYを1時間以内で結べる」と強調。米国の投資家にリニアを売込み、さらに大胆な減税を断行する決意まで表明した。
翌26日の東京市場では、日経平均株価が寄付きから下落。一時は210円を超える急落となったが、政府が法人税減税の早急な検討を明記することで調整に入ったとの一部報道をきっかけに、一気に買い戻しが膨らむ展開となった。
年金資金の運用見直し論議で、株の比率が高まるのではとの思惑が広がったほか、麻生副総理兼財務金融相が甘利経済再生担当相と黒田日銀総裁を自宅に呼んで夕食を共にしたことも判明。安倍首相が会見を予定している10月1日に向けて、法人税減税や追加の金融緩和の実施で、全て話しがついたのではとの憶測も台頭している。
安倍首相のスピーチ通り、果たして「BUY MY ABENOMICS」で経済再生となるかどうか。焦点はやはり10月1日に行われる安倍首相の記者会見での内容。第3の矢の成長戦略の発表では、市場の失望をかったこともあるだけに、投資家の期待に応えるだけの経済対策を示す必要があるだろう。
さらに週末4日には、米国の金融政策の先行きを占ううえで重要な8月の雇用統計が発表される。この数字次第で、量的緩和の縮小の時期を巡る思惑に変化が生じる可能性もある。
ドル円相場は11日のドルの高値100円62銭がテクニカルな抵抗線として意識されているが、今後の展開次第では7月8日の高値101円54銭も視野に入ってこよう。ドルの下値では、18日の安値97円76銭などがサポートレベルとなっている。