今週のドル円相場は、日曜日に明らかになったサマーズ元米財務長官の次期FRB議長候補辞退を受けて、週明けから売りがドル売りが加速。一時98円45銭まで売り込まれる場面もみられた。さらに注目のFOMCでは、市場の予想に反して資産買い取り縮小の見送りを決定。
バーナンキFRB議長の定例記者会見でもハト派的な発言が相次いだことを受けて、一気に97円76銭まで円高ドル安が加速した。米国債の10年物利回りも一時2.6714%まで急低下し、ドル売りに拍車をかけた。
しかし翌日には、一転してドルの買戻しが先行。一時99円65銭まで円安ドル高に振れた。米国経済の見通しに対する見方が分かれていることに加え、FRBの金融政策がいつ、修正されるのかを巡って様々な観測が流れており、先行きが見通しにくい状況になっている。
最大の焦点となったFOMCの声明文では、景気認識について(1)高水準の失業率(2)住宅ローン金利の上昇(3)財政政策(4)長期目標を下回る物価上昇率―等の問題点を指摘。「FOMCは資産購入のペースを調整する前に、景気の改善が持続的なものである証拠がさらに示されるのを待つことに決めた」と説明している。
では、どれぐらい待つのか?市場では、12月17-18の両日に予定されているFOMCでの縮小決定を予想する声が多い。ただ10月中にも米連邦政府の債務上限問題が決着すれば、10月29-30日のFOMCでの縮小開始もあり得る。バーナンキFRB議長が記者会見で「予定外の記者会見の選択肢もある」と意味深長な発言をしているのも気になる。
また来年1月末にはバーナンキ議長の任期が到来する。サマーズ議長の目がなくなったことで、次期FRB議長には再びイエレン副議長の名前が浮上しているが、バーナンキ議長はイエレン氏について、自分の政策をきちんと受け継いでもらえる人物と評価していることから、自分の任期中は判断を留保し、来年2月以降に先送りする可能性もある。
さらに一部では「オバマ大統領が頭を下げれば、バーナンキ議長がさらに2年間続投するという大どんでん返しもあるかもしれない」との声も出ている。後継人事についてホワイトハウスは「秋になったら内定する」と表明しており、具体名はいつ出てもおかしくない状況だ。市場もしばらくは人事情報に左右されることになりそうだ。
ドル円はFOMCが予想外の結果となったこともあり、一時は円高ドル安に振れたものの、97円台は強固なサポートレベルとして意識されている。ドルの上値では、7月8日の101円54銭や5月22日の103円74銭も戻りの抵抗線となっている。来週は日本企業が中間決算の期末を控えており、実需のまとまった取引にも注意したい。