今週、最も注目されたのが中国。上海総合指数は、中国人民銀行の金融引き締めを嫌気して、週明けから暴落した。目先の下値目処とされていた去年12月4日の安値1949.457を一気に割り込んで下げ足を速め、100ポイント以上の大幅な下落となった。翌日には中国人民銀が中国金融当局と緊急のミーティングを開催。「流動性リスクはコントロール可能」との声明を発表すると同時に、資金供給を行った。その結果、週末にかけて落ち着きを取り戻したものの、戻りも限定的となっている。市場の不安心理は解消されていない。
中国では、経済成長よりも、貸出しの増加ペースが上回るいわゆる過剰融資の状態が今も続いている。ノンバンクなどの金融機関が、地方政府などへの過剰融資を続けていて、それが不良債権化しているのではという心配が従来からあった。中国人民銀行が金融の引き締め姿勢を示したのは、こうした状態を憂慮してのこと。ところが、これを受けて株価が暴落しただけでなく、短期金利が急上昇。オーバーナイトのスワップ金利が30%を超えるという異常な事態となった。
これに対し、中国人民銀行は「流動性には問題はなく、必要であれば、更なる流動性の供給を実施する用意がある」との声明を発表するとともに、4大銀行に対して緊急の流動性供給を実施。事態の沈静化に努めた。ただ、市場の安定を優先して短期金融市場に資金供給し続ければ、今度は銀行の過剰融資問題を悪化させてしまう恐れもある。中国の金融政策は極めて難しい局面に差し掛かっている。
さらに、金融市場では最近、中国の経済指標への不信感が以前にも増して強まっていて、GDPも公表数字よりはるかに悪いのではないかとの見方がささやかれている。PMIも、政府が公表している数字より、民間金融機関のHSBCが発表している数字の方が信頼度が高いという事実が、市場の不信感を如実に物語っている。
アメリカ経済が回復して世界経済を牽引しようかという状況になってきている時に、世界第2位の中国経済が腰折れの危機に直面していることは、何とも皮肉な事態だ。東京市場も中国の動きに神経質になり始めており、今後も中国市場の動向が先進国の市場に影響する可能性がある。
ドル円は上海総合指数の暴落や日経平均の下落を受けて、一時1ドル=96円95銭まで円高ドル安が進む場面もみられたが、その後は株価の急速な回復や強い米指標などを受けて、ドルが買い戻される動きとなっている。今後もドル買いが先行する展開が続くとみられ、1ドル=100円台を伺う場面があってもおかしくない。引き続き日経平均などの株価動向に注意が必要だ。