日銀は11・12の両日に開いた金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定。長期金利の安定のための新しいオペレーションの導入は、市場の期待に反して見送られたため、翌13日には外国為替市場で1ドル=93円75銭まで円高ドル安が進行。日経平均株価は870円を超える暴落となった。
週末14日にメジャーSQを控えていたという事情も、日経平均の売りを大きなものにした。日経平均やドル円は結局、黒田日銀総裁が「異次元の金融緩和」に踏み切った4月4日の水準まで逆戻りしてしまった。
政府の成長戦略に対する失望感に加え、日銀の異次元緩和の副作用に対する警戒感が、海外の投資家を中心に広がっている。安倍政権と黒田・日銀総裁は、自分たちが育ててきた「過剰な期待」に、押しつぶされそうになっていると言ってもいいだろう。
「過剰な期待」を抱いた市場は、次々と新たな政策を催促し、それが現実しないとみると、失望売りを浴びせるという悪循環に陥っている。日銀の金融政策決定会合で、長期金利安定のための新たな対策が打ち出されなかったことを受けて、株価、円相場ともに過剰なまでの反応を示したことをみても、「過剰な期待」のリスクは明らかだ。
日銀の異次元緩和にもかかわらず、長期金利が高止まりしているのは、将来のインフレに対する期待の反映だけではない。市場に安部政権の財政政策に対する懸念が広がっているためだ。政府の「骨太の方針」では、国と地方のプライマリーバランスについて、債務残高の対GDP比の安定的な引き下げを目指すとしているが、この財政再建が不十分だと、日銀の大量の国債購入が単なる財政ファイナンスになってしまう恐れがある。黒田総裁もその点を懸念しており、「政府は財政再建をしっかり取り組むべき」と何度も警鐘を鳴らしているが、政府は市場を納得させるだけの政策を打ち出せていない。
昨年の11月に始まった日本株の上昇、円安の流れを最初に演出したのは外国人投資家だったが、彼らの多くは、今月末に中間決算を控えている。「過剰な期待」のはく落は、こうした投資家に手仕舞い売りの格好の口実を与えた。「異次元の金融緩和」を元の木阿弥にしないためには、政府が成長戦略や財政再建で、市場を納得させるだけの実績を上げるしかない。
ドル円は13日に一時93円75銭まで円高に突っ込んだものの、その後は買戻しの動きが先行している。日銀が「異次元の金融緩和」を実施した4月4日の92円73銭が、目先の円高の抵抗線として意識されているが、今後、株価が落ち着きを取り戻せば、円相場も当面は94円から99円のレンジでの動きとなるだろう。ただ1ドル=100円を超える円安には材料不足とみている。米国の金融政策が微妙な局面を迎えているなか、19日のFOMC後に行われるバーナンキFRB議長の記者会見での発言には注目が集まるだろう。17日から北アイルランドで始まるG8サミットでの議論にも注意が必要だ。