今週、注目を集めていた安倍首相の成長戦略第3弾は新味に乏しいとの受け止め方が多く、外国為替市場では一時1ドル=95円台まで円高ドル安が進んだ。ドル円は週初に100円の大台を割り込み、円買戻しの流れが続いていたが、アベノミクスも今回はこの流れを止めることが出来ず、むしろ円高が加速する結果となった。さらに週末7日のニューヨーク市場では、雇用統計が市場の予想を上回る結果だったことを受けて、一時94円台まで突っ込んだ。
株式市場でも失望売りが膨らみ、一度は収まったかにみえた投機筋の売り浴びせの動きも再開された。日経平均株価は1万3000円台を割り込むなど、株安と円高が並行して進む相場展開となった。
安倍首相が発表した成長戦略第3弾は、特区の新設や規制改革などが柱。経済成長を実現することで、10年後の国民総所得を一人当たり150万円以上増やすとの目標も掲げた。しかし、年金運用の弾力化や法人税減税についての具体的な言及がなかったことが、市場の失望を招いた。アベノミクスはこれまで、市場の期待値を引き上げることによって、円安と株高を演出してきたが、今回は自らが育ててきた「期待」に逆襲される形となった。
市場では日経平均の先物売りとドル売り・日本国債買いを同時に執行するシステム売買が増えており、こうしたアルゴリズム(人工知能)取引が株安と円高を加速している面もある。
一方で、日銀が進める異次元の「量的・質的金融緩和」は着実に行われている。日銀が公表した「マネタリーベースと日本銀行の取引」では、5月末時点のマネタリーベースが159兆1641億円まで増加。異次元緩和の決定後2ヶ月間で13兆1231億円増えた計算となる。日銀は金融政策を「年間約60〜70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調整を行う」としており、非常に順調なペースで増加していることが分かる。今後、次第に資金循環が活発化すれば、アベノミクスの金融面からのサポートが確実なものとなってくるだろう。
ドル円は週末に94円台まで円高が進んだものの、基本的には95-100円のレンジにスライドした形となっている。今後も一時的にはこのレンジを超えて円高に振れる場面もあるかも知れない。しかし異次元の金融緩和の効果が期待できるため、日経平均が落ち着きを取り戻せば、次第にドルの下値も堅くなってくると予想している。政府内では法人税減税に向けた発言も出始めており、こうした動きにも注目したい。