23日に日経平均株価が暴落したことを受けて、24日には一時100円66銭まで円高に振れた外国為替市場も、今週前半は落ち着きを取り戻し、29日には102円52銭まで円安に戻る場面もみられた。しかし、30日に日経平均が再び暴落すると、一転して円買いが先行。ドルの下値を試す動きとなり、一時100円46銭まで再び円高が進行した。
先週、今週と2度にわたる日経平均株価の大幅な下げは、このところの急ピッチの株価上昇に対するスピード調整であり、その意味ではさほど驚くべきものではないかも知れない。しかし23日と30日の下落の大きな違いは、30日の売り注文のなかに、かなりの投機的な要素が含まれていることだろう。
市場では、海外の投資家が1万3750円の日経225プットオプションを大量に買い込んでいたことが話題となっている。こうした海外の投資家が、プットオプションで利益を上げるため、日経平均先物を1万3750円を下回る水準まで売り込むという荒業に出たことで、投資家の不安が増大。売りが売りを呼ぶ展開となったようだ。
取引システムの高速化に伴って増えているアルゴリズム(人口知能)取引が、株価の下落幅をさらに拡大した面も見逃せない。今回は、先物市場での少数のプレーヤーによる取引が市場を混乱させ、株価の急落を招いたとみるべきだろう。
ただ、暴力的ともいえる投機筋の動きも、今後は鎮静化する可能性が出てきた。年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が「運用弾力化」の一環として、株式の運用比率引き上げを検討していることが分かったからだ。こうした年金資金の買いが現物市場の下値に控えているとなると、売り崩しを狙った無謀な先物売りは、逆に自分たちの首を絞める結果にもなりかねない。投機筋も、しばらくは大人しくせざるを得ないだろう。
ドル円は引き続き100-105円レンジで推移すると予想している。30日に日経平均株価が急落した場面では、一時100円46銭まで円高に振れたものの、テクニカルな抵抗線となる100円37銭や100円18銭が、ドルの下値のメドとして意識されていた。株式市場の動揺が収束すれば、米国の雇用統計などの経済指標に反応する相場に戻るだろう。