日本の政治家の発言が、マーケットを賑わしている。15日には甘利経済再生相が「円安は国民生活にマイナスの影響も」などと発言。その結果、ドル円は円の買い戻しが先行、一時的に87円台まで円高が進んだ。
自民党の石破幹事長が総選挙後に「(1ドル=)85〜90円にどうやって収めるか考えなければならない」と発言していたことも意識され、週前半は90円台に届かない動きとなった。
ところが週後半には、甘利大臣が「円高の修正局面にあり、100円はターニングポイントではない」と発言したほか、石破幹事長も「金融緩和は積極的にやっていかなければならない」と強調した。
このため市場は、こうした政治家の発言を軌道修と受け止め、ドル円は2010年6月以来となる90円台に達した。
そもそも円安牽制発言が出てきたきっかけの一つは、円安のスピードが速すぎることに対する懸念だろう。
日本経済は現在、2年連続で貿易赤字になっている。輸出産業にとっては円安が望ましいものの、貿易収支が赤字になっていることを考えると、日本経済全体にとって極端な円安はむしろマイナス要因ともいえる。
このため、政府・与党のなかに、行き過ぎた円安への懸念が台頭。円安を牽制する発言が相次いだと考えるべきだろう。
実際には、予想以上の円高に振れてしまったため、発言を軌道修正することになったが、基本的には急激な円安への懸念は根強いのではないか。
もっとも、21日と22日には日銀の金融政策決定会合が控えており、この結果を見るまでは相場の方向は定まりにくい。
マーケットでは、日銀が2%のインフレ目標を設定することが、既にコンセンサスになっている。次の焦点は、日銀がこの目標を達成できなかった場合の責任の取り方をどう定めるかなどに移っている。政府と日銀の対応が期待外れだった場合、これまで円安が進んだ反動で、円の買い戻しが進む可能性もある。ドル円、ユーロ円とも上下に大きく振れるリスクをはらんでいる。