衆議院では自民党が過半数を占めたことを受けて、日経平均は一時1万円台を回復した。取引時間中に1万円台を回復するのは、4月4日以来、約8ヶ月半ぶりのこと。また、外国為替市場も円安ドル高が進み、2011年4月12日以来の円安水準となった。
もっとも今回のマーケットの動きは、政権交代や自民党政権への期待の反映に過ぎない。投機筋の動きが主体であり、実体経済が回復してきているわけでもない。株高・円安の動きは徐々に落ち着いてくると考えられる。
この後、さらに株高・円安が続くかどうか見極めるためには、日銀の金融政策を巡る動向と、政府の景気対策の規模に注目する必要がある。
日銀は20日の金融政策決定会合で、資産買入基金の増額による10兆円の追加緩和を決めた。このような量的緩和がどこまで続くのかということもさることながら、市場では、安倍総裁が求めている物価目標の導入を、日銀が来年1月の決定会合で受け入れるのかに注目が集まっている。日銀はこれまでも「物価安定の目途」という事実上の物価目標を設定しているが、「目途」を「目標」という表現に改めることによって、新政権にどの程度の忠誠を誓うのかが、今後の金融政策を見通すうえでも重要なポイントとなる。
景気対策については、自民党の甘利明政調会長と公明党の石井啓一政調会長は、連立政権発足へ向けた政策協議などで話し合いを進めており、25日の党首会談で正式に合意する。今年度の追加補正予算については、10兆円規模の大型のものになるとの話も聞かれ、そうなれば株高を促す効果が期待できる。
これら材料を市場は見極める段階に入ってきている。期待感での株高ではなく、ここからは実際の材料をしっかりと見た上での動きに期待したい。
新政権への期待などから、外国為替市場では円売りが先行。最近1ヵ月の間にドル円は5円程度、ユーロ円は12円程度の円安が進んだ。しかし、今後は期待だけでこれ以上の動きは起こりにくい。円安の動きは一度失速し、これからは実体経済の動きや、株高・円安につながる政策が本当に実行されるかなどを見極める局面に差し掛かるだろう。