東京では9日から国際通貨基金(IMF)・世界銀行総会が開催されている。IMFは今回、2012年と2013年の成長率見通しを、前回=7月時点の予測から全面的に下方修正した。
まず注目すべきはユーロ。財政緊縮策によってユーロ圏の経済の落ち込みが顕著になっているが、今回のIMF見通しでも2012年は0・4%のマイナス成長となっており、前回の見通しより0・1ポイントの下方修正に。2013年は0・2%成長と辛うじてプラス成長の見通しだが、前回との比較では0・5ポイントもの大幅な下方修正になった。
さらに深刻なのがインド。2012年の成長率見通しは4・9%で、前回予測からわずか3ヵ月で1・3ポイントもの極端な下方修正となっている。リーマンショックなどの激しい経済変動が起きたわけでもないのに、これだけの大幅な下方修正は異例中の異例だろう。
このような厳しい経済状況を背景に、財政健全化の手法についても、様々な意見が出されている。最大の論点になっているのが、経済成長との両立の問題。
歳出削減や増税といった財政再建策は経済の下押し圧力となり、税収が落ち込んでさらに財政再建が困難になりかねないというジレンマを抱えている。この問題は、先進国にも新興国も共通のものだ。IMFでは、世界経済の成長率についても3・3%(▼0・2ポイント)、2013年も3・6%(▼0・3ポイント)と、いずれも下方修正。当面は低成長が続くと指摘しており、世界経済の迷走はまだまだ続きそうだ。
IMFの成長率見通しに代表されるように、世界経済の先行きは引き続き明るくない。このため、相対的にマシだとされる日本経済を背景にした円高圧力の継続が予想される。ただ各国の金融緩和を受けて、株価が下支えされるという面もあり、円高が急激に進むような展開も想定しにくい。身動きがとりにくくなるだろう。