アメリカ経済への注目度がここのところ高まっている。きっかけは先週の米雇用統計。「非農業部門雇用者数」が前月比11.5万人増となり、市場予想平均の前月比16万人増より弱い結果にとどまった。今年1月の27.5万人をピークに、2月が25.9万人、3月が15.4万人と連続して増加幅が縮小していて、雇用の伸び悩みが見てとれる。アメリカ経済で特に重要なのが「雇用」と「住宅」だが、その一角に失速感が出てきている。
さらに、ヨーロッパにも先行き不透明感が強まっている。
6日に投開票されたフランス大統領選では、緊縮財政の見直しを主張する社会党のオランド候補が勝利。1995年にミッテラン元大統領が退任して以来、17年ぶりの社会党大統領が誕生することになる。
またギリシャで行われた総選挙で、ギリシア新民主主義党と全ギリシア社会主義運動(PASOK)の連立二大与党を合わせても過半数を超えない結果となった。再選挙の可能性が高まったが、週末に入ってこれまで連立に否定的であった最下位の穏健左派政党が、挙国一致内閣を提案。与党中心の連立政権樹立による再選挙回避の可能性が出てきているが、依然油断はできない状況だ。
フランス、ギリシャの政治の変化によって、緊縮財政策の停滞が懸念されるなか、スペインでは、銀行4位のバンキアの一部国有化を発表。国内銀行改革を進めているが、大半の国内銀行は既に資金調達が難しい状態であり、債務問題を抱えている政府が追加支援を強いられる可能性も浮上。このため、スペイン株が下落するなど、経済の先行きが不安視されている。
米・欧ともに先行きが非常に心配される状況のためドル・ユーロともに売りが進みやすいといえるだろう。
アメリカ経済、特に雇用の失速が今後も意識されれば、ドル円でもドルが売られやすい。また欧州問題が依然として根強いことから、ユーロ円ではユーロが売られやすい展開となるだろう。