今週のはじめ、FRBのバーナンキ議長は失業率について「ここ最近の低下は、かなり緩やかな経済成長のペースと幾分一致していない」「労働市場は正常からは程遠いままだ」「雇用市場に大きな進展をもたらすために金融緩和は必要」などと発言。
これによって米雇用市場に慎重な見方と、その改善に金融緩和が必要であるとの見解が伝わり、量的緩和第3弾(QE3)に対する期待が盛り上がる場面があった。また、ボストン連銀のローゼングレン総裁も「米国のGDPがさらに迅速に成長せず、失業率が高いままであれば、さらなる緩和が必要とされる可能性」があると、同様に慎重な見解を示した。
しかし、これがFRBの総意とは言えない。フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁は「米経済は2012年に3%成長するだろう」「米経済は緩やかに成長を続ける」「最近の雇用報告に依然として勇気付けられている」としている。またダラス連銀のフィッシャー総裁も「データは2012年の成長見通し改善を示唆している」「FRBは責務を果たしている」との見方を示した。
こうした発言は逆に、先行きを比較的楽観視しているととれ、場合によっては金融緩和解除を早める可能性を示しているとも言える。
来週の注目される経済指標は「ISM製造業景況指数」や「ISM非製造業景況指数」、そして「雇用統計」だ。先月は非農業部門雇用者数変化が22.7万人、失業率が8.3%という数字であった。
今年は大統領選挙を控えているため緩和的な政策が進められやすい地合であり、これらの数字がもう一段改善してもFRBが言明している「2014年末頃までの金融緩和」との考えを即座に変更する可能性はそれほど高くはない。
早くても大統領選挙後の11月過ぎが妥当であろう。それでも、統計結果が良ければマーケットは金融緩和終了を織り込みに行く可能性もある。そうなると、市場は再び大きく動くため来週の指標は非常に注目度の高いものになりそうだ。
ドル円・ユーロ円はドル/ユーロ売りが出ているが、明確なネガティブ材料が出てきたわけではない。来週のアメリカ経済指標の発表内容を確認しないことには、市場は様子ムードが続くことになりそうだ。