今週も欧州に関する話題は事欠かなかったが、目立ったのが格付け会社S&Pの動きであった。5日(月)には、最高ランクの「トリプルA」に格付けされているドイツやフランスをはじめ、ユーロ圏15カ国の格付けを、短期的に格下げされる確率が50%であることを示す 「クレジットウォッチ・ネガティブ」に指定。理由については「ユーロ圏の信用状況の悪化や、国債の利回りが上昇している」「危機対応をめぐり、各国の足並みがそろっていない」という点を挙げている。
また6日(火)には欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の「トリプルA」長期格付けを「クレジットウォッチ・ネガティブ」に指定。前日の発表に続く措置であり「トリプルA」格付けを持つユーロ圏加盟国が1か国ないし2か国格下げされれば、EFSFも格下げされる可能性があるとしている。
さらに続く7日(水)は、欧州連合(EU)の長期信用格付けも「トリプルA」から「クレジットウォッチネガティブ」に格下げ。財政問題・危機対策ともに決定打に欠き、問題を先送りしているEU諸国の姿勢に対するS&Pが警戒感が顕著になっている。
このようにS&Pが欧州に対して非常に強く懸念を示すなか、8日(木)に行われたECB会合では、政策金利が0.25%引き下げられ、1.00%となることに。ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、2012年のユーロ圏GDP成長率について「−0.4〜+1.0%」との見通しを示した。ユーロ圏が再び景気後退入りする可能性を見込んでいることを示した格好で、このような景気減速を鑑みての利下げと考えられる。
市場ではこの決定をいったんは好感するムードが広がったものの、ECBがユーロ圏の国債購入の大幅増額やIMFを介した資金支援には否定的な態度を鮮明にしたことで、再びユーロは売られる場面があった。
今後もユーロに関する話題は数多く出てくるだろうが、根本的な解決策が出てこない限り、問題は片付かない。引き続きユーロの上値は重いだろう。
ユーロ円はネガティブ材料が相次ぎ、依然としてユーロの上値が重い。ドル円は、はっきりとした材料が見当たらず、もみあうことになりそうだ。