先週、中国で預金準備率の引き下げが噂されていると紹介したが、当局の行動は予想以上に早かった。中国人民銀行は、11月30日に市中銀行に求める預金準備率の引き下げを決定。2008年以来の引き下げだ。具体的には従来の21・5%から0・5%引き下げて21%にする。適用は12月5日から。UBSの試算によるとこの措置で約3500億元(日本円で約4兆3000億円)の流動性が増加することになる。これは金融緩和の一環であるといえる。
また、FRBなど世界の6つの主要中央銀行は欧州の債務・金融危機の緊迫化が、世界経済に波及するのを防ぐための対策を発表した。内容の軸は3点。(1)銀行が中央銀行からドル資金を借りるときの金利を0・5%下げる。(2)FRBとの米ドルスワップ取り決めの期限を6ヶ月延長する。(3)米ドル以外の資金供給オペに備えた多角的スワップ取り決めを締結する。
この措置は景気回復のために足元の流動性を確保するということ、そして金融危機など緊急と気の備えをしたということである。市場は世界的に緩和的な処置を好感し、株相場では買いが広がった。ただ、今回の対応はそもそも市場環境の悪化が原因であるが、根本のところが厳しいことに変わりはなく、株価上昇は一時的なものに留まるだろう。
ユーロという通貨の存続に対する確信がなければこの問題の出口は見えてこない。ヨーロッパ問題はそれほど簡単に解決するものではなさそうだ。
世界的な金融緩和を受けて、ドル円・ユーロ円相場ともに円安方向に推移している。今週ももう少し円安方向に向かう可能性がある。ただし、はっきりとした円売り材料が出てきたわけではないため、動きは一時的なものに留まるだろう。