ユーロ圏経済は非常に厳しい状況となっている。緊縮財政政策を行なっていることなどが成長の重しとなり、今週15日に発表されたユーロ圏7−9月期GDPは前期比でプラス0・2%という低成長に。2010年末には回復局面があったものの、あくまで一時的なものに留まっている。
また、15日に発表された、向こう半年の景気見通しに対する調査した「ZEW景況感調査」がマイナス59・1と非常に弱い結果となった。これは2008年10月以来の低水準。さらに、今月発表された製造業PMIは47・2という予想に対して、46・4という結果だった。小売売上高はプラス0・1%の予想に対して結果がマイナス0・7%となり、軒並み予想を下回る非常に厳しい内容となった。
こうした指標が発表される前、ECBは3日に行われた政策委員会で市場予想に反する利下げを断行。このときにドラギ総裁は「成長見通しの著しい引き下げはあり得る」「経済の下振れリスクが増大している」と述べ、先行きが厳しい状況であるとの認識を示していた。その後の弱い指標は、ドラギ総裁の懸念を裏付けるかたちとなった。
経済のみならず財政問題に関しても不透明感が根強い。今週はイタリアやスペインの財政問題が意識され、両国の長期金利が大幅に上昇。イタリアは7%台、スペインは6%台へ。また、ユーロ圏で2番目のGDP規模を誇るフランスの長期金利も上昇し、3%台後半となる場面もあった。一部通信社が関係者の話として「ユーロ圏と国際通貨基金(IMF)は、ユーロ圏の大国の救済に十分な資金を供給するために、ECBがIMFに融資を行う案を検討している」と配信。これによってイタリアに対しての警戒感が強まる動きも見られた。
ギリシャのみならず、イタリアやスペインの財政問題が強く意識されるうえ、実体経済の環境も厳しいとなれば、ユーロが売られるのも当然の成行だろう。ユーロ円は1ユーロ=103円台をつけていて、10月上旬以来の水準に。連日売られたために目先のところはショートカバーが入る可能性もあるが、それも一時的なものにとどまろう。10月4日につけた今年安値の1ユーロ=100円77銭を下抜けて、100円を割り込む可能性も今後十分想定される。
ドル円相場では積極的にドル買いを仕掛ける材料に乏しく、ドルの上値は重い状況。ただ、介入警戒感もあり、ドルが一方的に値を下げる展開とはなっていない。
ユーロ円はユーロ圏の経済・財政状況を背景にユーロ売りが進みやすくなっている。先週一週間は一方的に下げ続けたため一時的にショートカバーが入るかもしれないが、基本的にはユーロは下落方向で見ておきたい。