EUは27日、欧州債務危機に対する「包括戦略」を取りまとめた。3つの課題で合意しており、その中身は(1)ギリシャ支援の民間負担増(2)金融の安全網である欧州金融安定基金(EFSF)の拡大(3)欧州銀行の資本増強となっている。
その内容だが、ギリシャ支援の民間負担増については、7月時点では21%だった民間の負担を、50%の負担を増額することで合意に至った。EFSFの拡大は、EFSFが提供する資金を呼び水にして5倍程度の資金を外部から呼び込むことを目指すというもの。2000億ユーロを原資にすれば、1兆ユーロの支援も可能となる目算だ。欧州銀行について「狭義の中核的自己資本」の基準は5%となっていたが、これを9%に引き上げてより健全な経営を求める。南欧各国の銀行など、自己資本の増強が難しい場合には、公的資金の注入が必要になる可能性もある。
今回の包括戦略の決定をマーケットはポジティブに捉えた。27日の金融市場では全体的に堅調な動きを見せた。外国為替相場でユーロ円は1ユーロは108.14円まで上昇し、9月8日以来の高値をつけている。また、株式市場も底堅い動きを見せ、ドイツのDAX指数は一時5%近くの上昇となった。ユーロ相場を中心に、安定した動きは続くかもしれない。
ただ、楽観視は出来ない。ギリシャは事実上破綻しているとの声もあり、目先の対策は打たれたかもしれないが、懸念は強く残っている。イタリアなど、市場規模の大きいところで同様の問題が起これば、収束はより困難なものになる。と指摘する市場参加者もいる。
今回の決定をポジティブに捉えた動きはもう少し続くかもしれないが、問題の根本的な解決がみられたわけではない。ユーロ相場や欧州株価が、今後も一方的に上昇を続けることはなさそうだという点を忘れないでおきたい。
今回、欧州債務問題に対して「包括戦略」がまとまったことで、ユーロ円相場は堅調な動きを見せている。比較的安定した動きが来週も続きそう。ドル円に関しては、今週発表された日銀の円高対策がそれほど実効性を期待できるものではないことから、引き続きドルの上値が重くなりそうだ。逆に円が再び戦後最高値を更新する展開もありえると考えておきたい。