欧州中央銀行(ECB)は定例理事会を7日に行い、政策金利を0.25%引き上げて、1.50%にすることを決定した。市場予想通りの利上げ幅となった。トリシェ総裁は理事会後に定例会見を行い、「金融政策のスタンスは依然として緩和的」「物価上昇リスクを考えれば利上げは必要」「物価リスクを非常に注意深く監視する」と述べ、インフレへの警戒感を強調した。これらか先の利上げについては言及しなかったものの、インフレへの警戒感が維持されたことで、今後も利上げを行う可能性があるとして、ユーロは買いが入った。
また、ギリシアの財政危機問題についても、6月30日に歳出削減と国有財産の売却を盛り込んだ法案がギリシア国会で可決。これは日本円で総額9兆円に及ぶ大型な歳出削減案であり、更にこれを受けて、EUおよびIMFが追加融資に踏み切ることとなったことで一旦の決着を見せ、ユーロは買われる場面があった。
ただ、このニュースで楽観出来るほど、ことは単純ではない。
今回の一連の出来事は、一時的な当面の資金繰りの手当てに過ぎず、順調に歳出削減が実行できても、緊縮財政の影響でギリシアの景気が大きく落ち込む可能性が残る。その結果税収が大幅に減少すれば、最終的には財政赤字が縮小しないことも想定される。
また今週、米国の格付け会社ムーディーズが、ポルトガルの格付けを「BAA1」から「BA2」へ、投機的水準に引き下げた。その結果、ポルトガルの国債の利回りが大幅に上昇する場面があった。更に、市場関係者の中には、ポルトガルだけではなく、イタリア、スペインも財政危機予備軍として控えているという見方が広がってきている。近い将来これらの国の格付けが引き下げられる可能性がある。
加えて、昨日のECBの政策金利引き上げも、欧州各国の景気を抑制する効果がある。トリシェ総裁は「ECBの優先すべき責務は物価の安定にある」「ECBは物価安定目標に妥協を許さない」としており、景気減速が確認出来ても、インフレ率によっては、利上げが継続される可能性がある。
ギリシアの緊縮計画可決などで若干ポジティブな動きが広がったユーロだが、引き続き慎重な見方をしておく必要があるだろう。
株式指標がしっかりしている影響もあり、ドル円は下値がしっかりしている。ただ、先週のユーロ円は、ポルトガルの格付け引き下げなどネガティブな材料が続き売られる場面あった。今週も、上値が重くなりそうだ。