中国の景気回復が進む中、FRBの金融緩和に起因する金余りによるインフレの上昇を回避するため、中国人民銀行は昨年1月から銀行の預金準備率を段階的に引き上げている。また、昨年10月からは1年物預金金利や貸出金利の引き上げも開始している。
今週8日には1年物預金金利を2.75%から3.00%、貸出金利を5.81%から6.06%にいずれも0.25%引き上げた。
中国の不動産価格は、昨年5月から19ヶ月連続で上昇している。しかし、中国は金融引き締めに加え、住宅購入時の頭金比率の引き上げや、2軒目以降の住宅購入の融資条件を厳しくするなど、不動産バブルを断固として抑制する姿勢を見せており、不動産価格の上昇は一服してきた。
ただ、中国のCPIは2010年から5%前後で推移している。中国政府は、2011年のCPIの目標を前の年の3%から4%へと引き上げたが、その目標を上回る状況が続き、インフレ懸念が引き続き意識されている。
シカゴ先物市場(CME)の原油・金先物相場は、新興国経済の成長に伴う需要増などから堅調地合いが続いている。中国のCPIは5%前後での推移が続いているが、原油・金などの商品相場が上昇を続ける限り、上振れ圧力が掛かるだろう。物価の安定を維持するため、中国は今後も金融引き締めを継続せざるを得ないのではないか。ただ、行き過ぎた金融引き締めは景気の減速に繋がる可能性があるため、注視していきたい。
8日には中国の1年物預金・貸出金利が0.25%引き上げられたが、事前に利上げへの思惑が広がっていたこともあり、為替相場への影響は限定的だった。ただ、15日には1月の中国CPIなど主要経済指標の発表を控えている。インフレの上昇が確認されれば、再び金融引き締めへの思惑が高まり、景気回復の鈍化が嫌気され、ドル円やユーロ円は上値が重くなるだろう。