世界的にインフレが加速している。その要因の一つとして挙げられるのが食料品価格の上昇である。
ロシアの干ばつやオーストラリアの洪水など世界的な天候不順で食料品の供給が不足している一方で、BRICsを始めとする新興国の経済成長で需要が拡大。人口増加ともあいまって不足感が高まっている。また、世界的な金融緩和によって市場に溢れた投機資金が、食料品・原油などの商品市場や不動産市場などに流入していることもインフレの加速に繋がっている。
なお、ブラジル、ロシア、ユーロ圏、英国のインフレ率は、各中央銀行が目標としている数値を上回る水準で推移している。
インフレの加速に歯止めを掛けるべく、新興国はこぞって金利を引き上げている。金利が上昇すれば、個人がお金を借りづらくなると同時に市場に溢れた資金も貯蓄に向かうため、商品・不動産などへの投機を抑制できる。しかし、企業の事業拡大に必要な資金も借りづらくなるため、新興国経済の成長や、輸入の鈍化が懸念される。
堅調に推移していた新興国経済であるが、ここにきて景気が減速することになれば、その影響は先進国にも及びそうだ。自らの景気回復を新興国の経済成長に頼っているためで、実際、25日に発表された英国のGDP速報値は、市場予想の前期比+0.5%に対して−0.5%のマイナス成長となっている。
インフレ懸念が、世界経済の回復を遅らせるネガティブ要因になる可能性が出てきている。注意が必要である。
S&Pの日本格下げを受けて、為替相場は全体的に円安が進み、ドル円やユーロ円は上昇した。ただ、ここから更に上値を追う材料に乏しい。また、新興国の景気減速に伴って株価の上値が抑えられれば、ドル円、ユーロ円も上昇は難しく、方向感の定まらない動きになるだろう。