先週から今週にかけてアイルランドを巡って様々な動きがあった。先週はじめには、アイルランドがEUとIMFに金融支援を要請。しかし、翌日にはS&Pがアイルランドの格付けを引き下げ、更に、22日にはムーディーズが大幅に引き下げることを示唆した。そして、24日、アイルランドが財政再建策を発表。向こう4年間で150億ユーロの赤字削減を見込んでいるが、内100億ユーロは2万人を超える公務員の削減など歳出カットを行い、残りは付加価値税(日本の消費税にあたるもの)の増税で補完する予定、としている。
今週初めには、EUの財務大臣の会合でアイルランド支援の詳細が決定。期間7年半で総額850億ユーロの融資パッケージを実施することとし、内訳はEUから450億ユーロ、IMFから225億ユーロを受け取るほか、自国の国家年金積立基金から175億ユーロを拠出するとなっている。
このように、アイルランドについては救済の方向で動いているが、欧州の問題はまだまだ解決には程遠い。むしろ、次の問題はどこか?と市場は疑心暗鬼になり、欧州各国の10年債利回りはここにきて急上昇している。2日には一部市場参加者から「ECBがアイルランドやポルトガルの国債を購入していた」との指摘もあり、週末にかけてやや落ち着きを取り戻しつつあるが、依然として高水準である。
マーケットの不安を裏づけるように、29日にEUの欧州委員会が発表した2011年の実質GDP成長率は厳しい内容となっている。特に、ギリシャとポルトガルは2011年はマイナス成長に陥ると見られている。また、アイルランドも緊縮財政を敷いているために、GDPには下押し圧力がかかる。また、スペインはGDPの規模が1兆6000億ドルと、ギリシャの3600億ドル、アイルランドの2800億ドル、ポルトガル2400億ドルと、これらを合計した場合よりも大きい。そのため、スペインの財政問題に市場の関心が向かうと、これまで以上に相場が大荒れとなる可能性もある。
色々と動きがあるように見える欧州の問題であるが、危機的状況であることは何も変わっていない。引き続き警戒が必要だろう。
円相場は全体的にそれほど方向感が出ていない状況で、ドル円、ユーロ円共にもみ合い相場が続くことになりそう。ただ、欧州関連で何か新たな材料が出てくると、再びユーロが売り込まれる可能性があるため注意が必要。