ドル安の流れが依然として止まらない。今週は30日に格付け会社ムーディーズがスペイン国債の格付けを最上級の「Aaa(トリプルAに相当)」から1段階引き下げ「Aa1」とした他、アイルランド政府と中銀が、既に国有化しているアングロ・アイリッシュ銀行への公的資金の投入額は最悪のケースで340億ユーロ(約3兆9000億円)に膨らむとの見通しを明らかにした。
ただ、このようなネガティブなニュースが出てきたにも関わらずユーロドル相場は1日、1.3700ドルまで上昇。これは4月15日以来のドル安ユーロ高水準となっている。また、ドル円相場も再び、介入のあった15日につけた年初来安値(ドル安円高)の82.87円に迫っている。
現在は、米景気減速懸念を受けてFRBが金融緩和を再び推し進める可能性があり、それを受けて米長期金利が低下。結果ドルが売られるという流れになっている。ドル円相場だけを見ると円高が進んいるようだが、為替相場全体でドル安が進み、その結果としての円高とも言える。
今週29日には日銀短観が発表され、業況判断は比較的しっかりしているものの、先行きに関しては製造業、非製造業共に弱い結果が発表された。特に製造業は、7四半期ぶりに前期比で悪化見込みとなっている。この結果を受けて、来週5日、日銀の金融政策決定会合では、追加の金融緩和を行うであろうとの見方が強まった。
ただ、ユーロドル相場を見てもわかるように、ドル売り圧力は非常に根強い。市場では金融機関に政策金利水準で長めの資金を供給する固定金利オペの増額や期間延長、当座預金を積み増すなどを行うのではといわれているが、これらの内容は既に市場に織り込まれているため、同様の内容ではドル安円高圧力を止めるのは難しい。
また、30日には政府が2兆1000億円程度の円売り介入を実施したと発表。短期間での介入規模として小さい額ではないが、ドル安の環境での円高を食い止めるにはこの規模では心もとない。積極的な対応が今後も、政府・日銀には求められる。
米景気減速によってFRBによる米金融緩和が行われるとの観測が高まり、ドル安が進みやすい環境となっている。ドル円は介入警戒感もあるが、基本的には上値が重い動きとなるだろう。
ドル安相場となっているためにユーロ円は方向感がはっきりしない。ユーロドルが上昇したことで、先週はどちらかといえば少し上値を伸ばしたが、ドル相場に市場の関心が向かっているため、ユーロ円が急伸する展開は考えにくいだろう。