ドル円相場でのドル安・円高がじりじりと進んでいる。8月11日には一時、1995年7月以来となる84.72円まで円高が進んだ。実に15年ぶりの円高水準。先週末発表された米雇用統計で非農業部門雇用者数変化が市場予想6.5万人減に対して、13.1万人減となったことや、10日のFOMCで、米景気に対する警戒感を背景に実質的な量的緩和政策へとFRBが舵を切ったことなどを受けて、ドル安が全面的に進んだ。また、各国株式市場が冴えない動きになっていることも、リスク回避の円高(ドル円・クロス円の売り)を誘っている。
円高によって厳しい状況に立たされているのが、日本の輸出企業。代表的な大手輸出企業はほとんどが想定為替レートを90円程度に設定している。円高が進めば利益を押し下げられ、それが業績悪化につながれば、株価にはマイナス。株が下げると為替相場はますます上値が重くなるという負のスパイラルに入り込んでしまう。また、日本は輸出依存の体質でもあるため、円高はなお厳しいといえる。
こうした状況にあって、為替介入や追加の金融緩和を期待する声が上がっている。日銀は、現在、政策金利0.1%で3カ月物の資金を供給する新型オペを20兆円まで拡大しているが、さらに6カ月物の同オペ10兆円を導入するとの観測が出ている。ただ、これでは円高の抑止力には成り難いと、ほとんどの市場参加者が考えている。また、米経済が厳しい状況にあるため、自然な成り行きでのドル高・円安も期待できない。ドル円相場は安値圏での動きが続く可能性が高くなっている。
米景気減速懸念からくるドル売り圧力が根強く、ドル円相場は引き続き上値が重くなりそう。先週は年初来安値を更新し84.72円まで値を下げたが、今週も下げ幅を広げる可能性が残る。ユーロ円はドル円が下落した影響で少し値を下げているが、基本的にはドル相場に市場の注目が集まっているため、方向感が出にくい状況が続く。