先週末の19日、中国人民銀行(中央銀行)が、「人民元相場の弾力性を高める」との声明を発表したことから、2008年7月から事実上固定されていた人民元相場が、今後切り上げられるとの観測が出ていた。しかし、週明け月曜日、元取引が始まる日本時間10時半に基準の値として公表する『中間値』は、週末と同レートに据え置かれていた。しかも、それは週末の終値との比較では元安水準だ。
その後の元相場は、若干元高方向へ推移しているものの、中国人民銀行は大幅な為替介入を行っていると見られ、元相場の値動きは抑えられている。元切り上げを強く望む米国からは、不満の声があがり、オバマ米大統領が「人民元は過小評価されており、不当な優位性がある」と、不快感を示す場面もあった。
今回の中国による人民元切り上げは米国やG20に配慮した結果との声が聞かれる。これらの影響が全くなかったとは言い切れないが、それ以上に深刻なのが中国の国内事情である。消費者物価指数は、昨年夏場にはマイナス2%弱と大きく落ち込んでいたが、足元は3%を超える水準にまで上昇。このままだと、7%程度まで上昇するとの予測もある。そうなれば、特に農村部に多い貧困層の生活が立ち行かなくなる。人民元の切り上げは中国の輸出企業にとってはマイナス要因だが、中国のインフレ抑制効果を考慮すると、人民元を切り上げざるを得ない。今回の元切り上げは、今後の中国の発展を考えると、通らなければならない道と言える。
ここであわせて注目したいのが、今月22日に中国人民銀行が発表した声明。それは「全世界で人民元の決済を認める」というもので、人民元の完全国際化を視野に入れた動きと見られる。今後、人民元建ての貿易が拡大していくことはほぼ間違いなく、また、香港などで一部解禁されている人民元建ての債券発行も、今後も加速していくことになろう。そうなれば、人民元の世界的な地位は高まっていく。短期的には動きの鈍い元相場であるが、長期的には元高が進む可能性が極めて高いと考えておきたい。
弱い住宅指標が続いたことなどが嫌気され、NYダウが軟調な動きを示しており、それに併せてドル円も値を下げている。株がじりじりと下げているため、ドル円も上値が重い状態が続きそうだ。ドル円が下げていることや、欧州経済が依然として厳しいことなどが意識され、ユーロ円も引き続き値を下げやすい環境にある。