中国税関総署が10日発表した5月の輸出額は、前年同月比48.5%増の1317億6千万ドルとなった。貿易黒字は同49.8%増の195億3千万ドル。欧州の問題で市場には不安感が広がるが、中国経済はしっかりした動きを見せている。ただ、対米黒字が5割増の167億ドルに膨らんでいて、米国は人民元の切り上げを要求している。これは、人民元切り上げが世界的な貿易不均衡の是正や、米雇用増につながるとの考えからだ。10日の米上院財政委員会では、ガイトナー米財務長官が「中国の為替改革は非常に重要である」と発言し、人民元の切り上げを求める場面もあった。
また、中国の国内にも人民元切り上げの必要性を訴える声はある。その理由の一つは、人民元レートを固定するための元売り・ドル買い介入によって市中に大量の元が供給され、それが量的緩和と同様の効果を発生させ不動産バブルを演出している、というものだ。中国国家統計局が10日発表した5月の主要70都市の不動産販売価格は、前年同月比で12.4%上昇。4月の12.8%を若干下回ったものの、非常高い伸びが続いている。不動産バブルの懸念は高まっている。
欧州の財政問題に市場の関心が向かい、人民元切り上げの話題が少し影に隠れていたが、切り上げが必要なくなったわけではない。今後中国当局が、いずれかのタイミングで人民元を切り上げる可能性があることはしっかりと頭に入れておきたい。
一時的にユーロが買い戻される場面もあったが、欧州の財政問題は解決しておらず、ユーロは上値が重い状態が続く。ドル円はユーロに市場の関心が向っているため、方向感に乏しい。ただ、株が安値での揉み合いになっていることもあり、大きく崩れることもなさそうだ。