ユーロがなかなか下げ止まらない。5月25日にユーロ円は2001年11月27日以来の安値となる108円83銭まで下落。懸念材料はいくつも挙げられるが、最近特にマーケットに注目されている3つのポイントがある。それは‥
1. 本当に財政再建が出来るのか?
2. 財政再建(緊縮財政)をした場合、
ユーロ圏の景気が後退するのではないか?
3. ギリシャなどの国債がデフォルトになった場合、
欧州各国に問題が波及するのではないか?
財政再建の問題については、ギリシャのゼネストが懸念材料の一つとなっている。今年に入ってからゼネストは計4回あり、特に今月に入って2回行われて3名が死亡している。来月にはスペイン、イタリア、ポルトガルを巻き込んだ数カ国同時ゼネストを計画しているとの発表もあった。南欧が一体となってゼネストを計画する状況にあり、収束する気配は見られない。
なおイタリアでは、来月、4時間のゼネストが計画されていて、これにはおよそ500万人が参加する予定だ。先週行われたギリシャのゼネストの参加者は2万人で、両国を対比するとイタリアの規模の大きさが際立っている。
また、実際に財政再建を実行に移せたとしても、これは同時に緊縮財政を行うことを意味し、欧州圏の景気を大幅に悪化させる可能性がある。IMFが5月11日に発表した統計によると、ギリシャ、スペイン、アイルランドは2010年はマイナス成長。ユーロ圏全体の成長率は1.0%となっているが、日本の1.9%や米国の3.1%と比べると、非常に低い成長率となっている。仮に財政再建が進んだとしても、景気悪化を嫌気した投資資金の流出が起こり、ユーロや欧州株価が一段安になる展開も想定される。
その他、可能性は低いとはいわれているものの、ギリシャなど南欧諸国が債務不履行(デフォルト)を行うことも心配されている。欧州各国は国債を欧州圏内で持ち合う構造になっているため(ギリシャでは対外債務の約80%を欧州の金融機関が占めている)、デフォルトは即座に他国の損失を発生させる。 ユーロは次から次へと問題が噴出、厳しい状況がまだ続くと考えておきたい。
ユーロを取り巻く問題に大きな進展は見られないため、ユーロ円は引き続き上値が重い。再度、年初来安値を更新する展開も考えられる。対して、市場の関心がユーロ相場に向かっているため、ドル円は方向感が出にくく、もみあいが続きそうだ。