米格付会社のムーディーズは10月29日、財政悪化などを理由にギリシャの外貨建て・自国通貨建て格付け「A1」を、格下げ方向で検討していることを発表した。その後しばらく具体的な動きは見られなかったが、今月8日に米格付け会社フィッチが、ギリシャ国債の格付けを「BBB+」に引き下げた。アウトルックは引き続き「ネガティブ」。また7日にはS&Pが、信用格付けについて調査を行う「クレジット・ウォッチ」にギリシャを指定し、17日にはギリシャの長期ソブリン債格付けを従来の「A-」から「BBB+」に引下げた。S&Pは同日、ギリシャの銀行、EFGとアルファ銀行の2行の長期格付けも「BBB」に引き下げている。
今回の格付け引き下げによる問題点は、ECBの適格要件にある。現在、欧州中央銀行(ECB)が市中金融機関に資金を貸し付ける際の適格担保の要件は「BBB-」となっていたが、これは現在の経済環境を考慮しての時限的な措置。2011年初からは、従来の「A-」に戻される。このままだと、ギリシャ政府の資金調達は一段と困難になると予想される。
また今回の格付け引き下げは財政の悪化が主な要因だが、これも厳しい状況となっている。2009年10月に行なわれた総選挙で、景気刺激策を公約に掲げた政党が勝利。2009年の財政赤字の見通しを対GDP比で12.7%に引き上げたが、これはユーロ導入時の基準となるマーストリヒト条約で定められている3%を大きく上回っている。また今の状態が続けば、公的債務残高の対GDP比率が2009年には112.6%、2011円には135.4%まで膨張する見通しとなっている。今すぐにデフォルトに陥るとは見られていないが、ギリシャの対外債務残高は欧州が8割以上を占めているため、ギリシャの信用不安はそのままユーロの信用不安につながる。この他、ドバイへの融資の大部分を欧州系金融機関が請け負っていたことなども嫌気され、ユーロは全面的に売られる展開となった。特にユーロドルは9月5日以来となる1.4304ドルまで下げてきた。
ドルに比べてここまで好調な動きを見せてきたユーロであるが、経済危機に直面し、徐々に問題点が浮かび上がってきている。
前述の通り、ユーロドルが大きく下げておリ、ユーロ円もやや下に向かいやすい。もっとも、年末のため積極的な売買は起こりにくい。ドル円も、何度か90円台に乗せる場面があったが、基本的にはもみ合いの展開になるだろう。