今月10日、フィッチ・レーティングスのソブリン部門統括責任者のデビット・ライリー氏のインタビュー(ロイター)が市場の注目を集めた。その内容は、最上級のAAAとなっている、英国・ドイツ・フランス・米国の中で、英国がもっとも格下げリスクが高いというもの。結果として、この日はポンド安となり、英国株指数のFTSE100種総合株価指数も下げることとなった。
また、ライリー氏は「一段の大規模な財政出動が実施されれば、英国の格付けはリスクに直面する」とも語っている。もっとも『財政悪化→格付け引き下げ』のリスクが出ているのは、英国だけではない。日本も同様だ。鳩山首相は、来年度の新規国債発行額を44兆円以下に抑える方針を示しているが、法人の申告所得総額や申告税額が共に前年比30%以上の減少となっており、大幅の法人税減少が見込まれる。そのため、新規国債の発行額を44兆円以下に抑えることは難しいとの見方があり、仮にそうなった場合、ライリー氏は現在AA-の日本の格付けを見直す可能性があると指摘している。
また、米国も財政赤字が続いている。12日発表された月次財政収支で、13ヶ月連続の赤字が明らかになった。財政赤字の拡大に歯止めがかかり、財政の健全化に道筋が立たないようでは、米国の格付けも引下げ圧力にさらされかねないとの見方が出ている。
株価は比較的落ち着いた動きを見せているが、今後、各国の財政悪化が本格的な市場のテーマになり、波乱要因にことも考えられるため、各国の財政状況には十分注目しておきたい。
ユーロドルがしっかりした動きとなっているため、ユーロ円も大きく崩れるとは考えにくい。もっとも、今週は重要な材料がなく、方向感のない動きとなった。ドル円も90.00円をはさんで小幅な動きに留まっており、この流れはもう少し継続することになりそうだ。