先週15日に、MPC(英国中銀・金融政策委員会)が資産買取プログラムを休止するという噂が流れ、これがきっかけになりポンドが急速に買われた。その後21日のMPC議事要旨でも「1750億ポンドの資産買取プログラムの規模を据え置いたことは、全会一致で決定した」と発表したこともポンド買いを一段と推し進めた。15日の安値から見ると、約一週間で10円近く(約7%)ポンド円は上昇したことになる。
しかし、これまでの発言や報道を冷静に拾ってみると、ポーゼンMPC委員がインビュー記事で資産買取プログラムの拡大を示唆したり、タッカーBOE副総裁が「必要があれば量的緩和を拡大させることは可能だ」とするなど、量的緩和についてはまだはっきりした方向が見えていない。英国経済は急速に悪化しているわけではないが、回復に転じているとも言い難く、非常に難しい舵取りを迫られている。
指標をみると、失業率は依然として5.0%台と低水準に推移。金曜日に発表された英GDP速報値も、市場予想の+0.2%を大幅に下回る-0.4%となり、6四半期連続でマイナス成長となっている。これは統計を取り始めて以来最も長いリセッションだ(直近では1990年の第3四半期から1991年第3四半期までの5四半期連続が最長)。日本、ドイツ、フランス、オーストラリア、ニュージーランドと軒並みGDPがプラスに転じ、リセッションから抜け出している中、英経済はまだ立ち直れていない。
しかし、それでもポンドが買われているのは、ドルへの信認低下などを背景にドル売りが進み、その結果としてポンドが買われているという側面もある。ポンドの上昇は必ずしも英国経済が堅調であることを表しているとはいえないと考えておきたい。
ドルの信認低下から来るドル安相場に変化はなく、ユーロドルが昨年8月11日以来となる1.50ドル台に乗せてきた。そのため、ユーロ円も堅調な動きになりそうだ。クロス円が堅調な動きになると、ドル円でのドル安は限定的なものになることが考えられる。