今週は、アメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズが破綻するという非常に衝撃的な出来事があり、その影響で金融市場が混乱。金融機関の資金繰りが困難な状況が出てきた。続いてアメリカ最大の保険会社AIGが危機に直面、今度はFRBとアメリカ政府がつなぎ融資を実施して救済するという形となった。
今年3月にベアー・スターンズをJPモルガンチェースを通じて救済買収させて事態を収拾したが、この時も特別融資を実施している。ファニーメイ(連邦住宅抵当公社)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の救済にもやはり政府が介入、両公社は政府の管理下に入った。しかし、リーマン・ブラザーズの時には、政府は助けを出さず、その直後にAIGは助けた。こうした政府の対応が場当たり的だということで、金融市場に不安が広がった。
市場は、政府がどの金融機関を助けてどの金融機関を助けないのか、ということが分からなくなった。その結果、金融機関どうしで資金の融通を行う資金市場で、どの金融機関を信用していいのか分からなくなり、お互いに疑心暗鬼となってクレジットラインを絞る動きが顕著になった。そのためにドル資金が不足し、ドル金利が急騰する事態も起きた。こうした状況を危惧した主要6カ国の中央銀行は、急遽、総額で1800億ドル(およそ19兆円)のドル資金を市場に供給するという緊急対策を決定している。ただ、これは、資金繰りの問題をとりあえず解決して金融市場の混乱を沈静化させる、というだけで、本質的な解決にはなっていない。
金融機関の資産の劣化はなお進んでいる。特に住宅市場は更に悪化しているのでまだまだ損失が出てくる可能性がある。また、ドル資金の不足、市場に十分に回っていないという状況は、金融機関の資金繰りの問題にとどまらず、金融機関から融資を受けている企業の経営問題にも繋がる可能性がある。更には、株式市場にも影響が出ていて、世界中の株式が急落している。こういう危機的な状況を受けてロシアや中国は、政府資金で株を買い支えるという行動にも出ている。
これまでにも「今回のサブプライム問題は、最終的には金融機関に公的資金を入れるか、或いは不良債権を回収して整理をする機構を作る必要があるのではないか」、ということが金融の専門家の中で議論がされていた。アメリカ政府は、ここまでの対策になかなか踏み込んでこなかったが、ついに18日には、そうした機構を作って金融機関から不良債権を回収し整理していく、つまり金融機関のバランスシートを圧縮していくことを検討する、という方針が発表された。混乱は大きいが、この方針が具体化されていけば、ある程度、金融システムを安定化させることができるかもしれない。今後は、この点に注目をしていきたい。