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2008年6月7日放送

今週、バーナンキFRB議長が重要な発言をした。「政策金利は成長促進と物価安定に向けて適切な水準」と述べ、当面政策金利を据え置くことを示唆した。また、「FRBにとって物価安定が最優先課題」と将来の利上げの可能性に含みを持たせる発言もしている。バーナンキFRB議長は為替相場に関しても言及、「ドル安が輸入物価の高騰を招いた。ドル安の影響を注視している」とドル安に懸念を表明した。バーナンキFRB議長が政策金利や為替相場に関し、これほど踏み込んだ発言をすることは極めて珍しく、発言を受けてドルが上昇している。ドル円も106円台にまで上昇してきた。

米国についで、欧州での政策金利に関しても重要な発言が飛び出している。5日に行われた欧州中央銀行(ECB)の理事会では、政策金利が現行の4.00%に据え置かれた。しかし、会合の後の会見でトリシェECB総裁が「ECBは(インフレ)に警戒を高めた状態」にあり「来月に利上げする可能性を排除しない」と発言した。バーナンキ発言でユーロは対ドルで下落していたが、この発言によるユーロは対ドルで急反発した。また対円でもユーロは上昇し、165円台に達した。

こうしたFRB、ECBのタカ派姿勢の背景には高止まりするインフレ率がある。米国の消費者物価指数も直近で3.9%とFRBが看過できない水準で高止まりしている。国内景気は減速しているものの、世界的な物不足で資源価格などが高騰、インフレ率が高止まりする原因となっている。また、ユーロ圏でもこうした環境は同様である。今週、ブラジル、インドネシア、フィリピンなどが利上げを実施しているが、世界的なインフレ傾向に各国とも深刻な懸念を持っていることが改めで浮き彫りとなった。

今週、バーナンキ発言でドル円ではドル高円安が進行した。それと同時にユーロの政策金利引き上げ観測からユーロ円でもユーロ高円安が進行している。世界的に利上げ期待が高まる中、国内ではこうした声が全く聞こえてこない。円金利が当面現状の水準で維持されるとすれば当然円売り圧力が高まってくる。ただ、米国金融機関の経営状況に不安が残っており、積極的に金利差を背景とした円売りを投資家が実施する可能性もそれほど高くはないだろう。全般的に緩やかな円安基調が続くと考えておきたい。

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