今週発表になった米金融機関1-3月期の決算発表では、主要な金融機関に於いてサブプライムローン関連で数千億円単位の損失が計上された。しかし、その程度の損失は事前に予想されていたために、市場は非常に落ち着いた動きとなった。信用市場の動向を示すマーキット社のABX指数の動きをみると、それまでの悪化傾向がここ1ヶ月ほどは一服してきており、今後の追加損失はある程度縮小してくるのではないか、という期待感が市場関係者の中に出始めている。
信用市場の悪化傾向は一服したものの、米国の実体経済は依然として減速が続いている。今週発表になった米住宅着工件数3月分は、年率で94万7000戸という結果となり、先月を約12%下回る大幅な減少となった。月ベースで見ると1991年3月以来、実に17年ぶりの低水準である。住宅市場の低下傾向に歯止めがかからない状態では、米国経済は今後も益々減速することになる。米国経済がリセッション(景気後退)に陥る可能性は高まっている。
こうした米国の景気減速を受けて、ドル安傾向が鮮明となっている。対円レートは株価安定による金利差に着目した円売りの影響で100-103円程度のレンジで落ち着いているものの、対ユーロではドル安傾向に歯止めがかからない。今週は一時1.6近くまでユーロ高ドル安が進行し、ユーロの史上最高値(ドルの史上最安値)を更新した。こうした動きを受けて、ユンケル・ルクセングルグ首相は「市場はG7での合意を理解していない」と苛立ちをあらわにしている。また、ECBメンバーであるウェーバー氏もユーロ高懸念を表明している。ECBがインフレ抑制スタンスを崩していない状態でのユーロ高牽制発言は、なかなか市場の理解を得られないということだろう。
今週、米国金融機関の決算発表の大半が一巡したことで市場の大きな変動要因が当面見つからなくなってきた。株価も狭いレンジでの揉みあいの展開に入り、為替市場も落ちついた動きを見せてくる可能性が高くなってきた。材料難の中、市場の関心が一時的に金利差に移りジリジリと円安が進む展開も考えられる。しかし、米国経済減速を背景としてドル安圧力もかかるため、ドル円は方向感のない展開が続きそうだ。来週の予想レンジはドル円が100円-104円、ユーロ円が160円-165円としておきたい。