米国の景気減速が益々鮮明になってきた。今週発表された米新築住宅販売件数は年換算で58万8000戸と1995年2月以来の低水準となった。また、住宅価格も前年同月比15%の下落という大幅な価格低下を起こしていることが明らかになった。また、販売に対する在庫率も1981年以来の低水準となっている。新築だけでなく、中古住宅の販売も低迷しており、住宅市場全体の落ち込みは一層深刻化している。
景況感も非常に悪い。消費者の景気に対する信頼感を把握するために調査されている米コンファレンスボードが発表した2月の消費者信頼感指数は75.0となり、5年ぶりの低水準となった。また消費者信頼感指数と同様に重要視されているミシガン大学消費者マインド指数2月分は、69.9と1992年以来、実に16年ぶりの低水準にまで落ち込んでいる。消費者マインドの低下は、消費の低下を誘引する可能性がある。米国経済は今後更に減速し、リセッション入りする可能性が高まってきた。
今週、バーナンキFRB議長は「景気減速と金融市場の緊張、海外の商品価格に起因するインフレ圧力という状態が共存し、それぞれが試練となっている」と米国経済がおかれている深刻な現状を認める発言をした。また、大手金融機関の資本力の強さを強調する一方で、「一部小規模銀行が経営破綻に陥るリスクがある」との衝撃的な認識を示した。こうした当局による悲観的な発言が今回の深刻な状況を物語っている。
米国経済の減速が確実になるに従って、為替市場ではドル安傾向が益々強まっている。対ユーロでは1.52台にまで上昇し、史上最高値を更新した。対円でもしばらく105円台から108円台のレンジで揉み合いを続けていたものの、今週になって、ドル安円高傾向が鮮明となり、遂に105円を割り込み、2005年5月以来の104円台に突入した。その他の通貨に対してもドル全面安の展開となっている。バーナンキFRB議長の発言もドル安を加速させる要因の1つとなった。
来週の為替市場でも、米国経済の減速を背景としたドル安傾向が基本的に続くであろう。今週のドル下落のスピードがかなり速かったことで、スピード調整でドル高方向に一時的に戻る可能性もある。しかし、発表される米国経済指標が相次いで景気減速の深刻さを物語っている中では、ドルへの下落圧力は今後も続くであろう。ドル相場に焦点が当たっている中で、その他の通貨は方向感のない展開が続くと思われる。来週の予想レンジはドル円が103-107円、ユーロ円では157-162円程度と予想している。