今週、原油価格が遂に100ドルに達した。来月開催される石油輸出機構(OPEC)の総会で、「今後の世界経済減速による需要の落ち込みを懸念して減産を決定するのではないか」という観測が流れたことが上昇の直接のきっかけである。しかし、その背後には中国をはじめとする新興国の急成長によって需給バランスが歪んできたことが、原油価格を高止まりさせているという現実がある。また、もう1つの主要エネルギーである石炭価格もここ1年間で約2倍に跳ね上がっている。
価格の上昇は原油・石炭などのエネルギーだけに留まらない。今週、ブラジル鉄鋼輸出大手ヴァリ(旧称リオドセ)は、日韓の鉄鋼大手と2008年度鉄鉱石価格を07年度比65%引上げることで合意した。これを受けて、豪州の鉄鉱石輸出大手リオ・テイントは、日本などのアジア諸国に対して、ヴァリよりも大幅な値上げを要求する方針を明らかにしている。また、豪英系資源大手のBHPビリトンと新日本製鉄、日本電工が、鉄鋼原料であるマンガン鉱石の2008年度価格について、前年度比4.1倍で合意したことが明らかになった。価格の上昇は資源全体に広がっている。
また、新興国の急成長の影響は食料品にまで及んでいる。小麦価格を例にとってみる。小麦は政府が基本的に海外から輸入し、国内の業者に売り渡している。政府は、2007年4月に売り渡し価格を1.3%、10月に10%値上げした。これを受けて、製粉会社も昨年秋、小麦粉の値段約10%程度の値上げに踏み切った。今年4月に売り渡し価格が更に30%値上げされる。これを受けて、小麦粉の値段が30%程度値上げされる可能性が高く、小麦粉を使用する食料品の値段も当然上昇してくることが想定される。
サブプライムローン問題に関する材料への金融市場全体の反応が鈍くなってきており、株式市場、為替市場とも方向感のない展開が続いている。来週もこうした動きが継続する可能性が高い。ただ、今週発表されたフィラデルフィア連銀製造業景況指数が、2001年以来の低水準であったなど米国経済の減速が益々確実視されてきている。こうした中、ドルに対しては下落圧力は根強い。従ってドル円での円安ドル高の展開は難しそうだ。予想レンジはドル円106−109円、ユーロ円156−161円。
サブプライムローン問題に関連したイベントが一巡したことで市場には一服感がでてきている。今後は新たな材料を探す展開となるが、それまでは為替相場も揉み合いの動きが続く可能性が高い。来週も主だった材料が今のところ見当たらないので、方向感のない展開となってくるであろう。予想レンジはドル円105-109円、ユーロ円155-160円